もっとコース上での追い抜きを! F1新レギュレーションを巡る駆け引き

  • サム・コリンズ●取材・文 text by Sam Collins
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 近年、レースをより面白くする方法を模索してきたF1GPは、今季(2019年シーズン)に向けて、テクニカルレギュレーション(技術規定)の大幅な変更を行なった。空力に関する新たなレギュレーションの導入によって、コース上での競り合いやオーバーテイクを(理論的に)より容易にしようというのがその狙いだ。

レッドブル・ホンダの躍進もあって盛り上がりを見せている今季レッドブル・ホンダの躍進もあって盛り上がりを見せている今季 この10年間、マシンの空力は複雑化の一途をたどってきた。だが、前を走るマシンが引き起こす乱流(タービュランス)の影響で、2台以上のマシンによる接近戦では追走車のパフォーマンスが大幅に落ちてしまうため、コース上での追い抜きやバトルは非常に困難な状態になっていた。

 この問題を解決するために、2019年のレギュレーション変更では、競り合いをより容易にするために前後ウィングの形状を単純化する等の対応策が採用されたのだ。果たして新レギュレーションは有効に作用したのだろうか? シーズンが半ばを過ぎた今、この問題にあらためて注目をしてみよう。

 空力レギュレーションの変更にもかかわらず、レース中の追い抜きが簡単になったとは言えないレースもあった。たとえばフランスGP。同国南部のポールリカール・サーキットで行なわれたレースは正直、眠気を誘うほど退屈で「この課題を改善してレースを面白くすることはF1界喫緊の急務である......」と、レース直後には多くのメディアやファンが口を揃えて述べていた。

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