「レプソル・ホンダから離脱?」
ロレンソとドゥカティの危険な火遊び

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 ミラーは現在、24歳。いわばドゥカティの将来を担うライダーだ。2019年シーズンは、ミラーが最新スペックのマシンで臨む初めてのシーズンだが、ここまでのレースで彼は大きな成長を見せている。たしかに何度かミスを犯したものの、オランダGPを除けばほぼ毎戦でトップファイブを争っている。とくに今回の2連戦では、ファクトリーのダニロ・ペトルッチよりも安定して前を走っているのだ。

 レース後の水曜に、ミラーは2020年の契約更改を発表し、ドゥカティ陣営の残留が決定した。安定した好成績を発揮できるであろうこのシートは、今後のライダー人生にとっても非常に意義が大きい。だが、今回の一連の出来事は、ミラーとドヴィツィオーゾが2021年の契約更改を提示された際に、何らかの熟考を要する要素になりはしないだろうか。

 さて、ロレンソだ。どこから話をしたものだろうか。少なくともこの一連の出来事からわかるのは、彼は勝ちたいという強い闘志を今もその裡に秘めている、という事実だ。

 この数カ月は負傷に苦しみ、引退の噂という屈辱的な風説も流布された。だが、己の資質を存分に発揮できるパッケージさえ見つかれば、4回目の世界タイトル獲得は可能だ、と彼が考えていることは間違いない。

 それにしても、いつもサテライトチームとの話ばかりが浮上するのも、奇妙といえば奇妙な話である。プラマック以外にも、レースウィークの土曜には、「2021年にはペトロナスヤマハSRTへ加入するのでないか」という噂が流れた。サテライトへの移籍は、「偉大なライダーで、しかも世界チャンピオン」と自らを銘打つことを好む人物に利するようには、あまり見えないのだが。

 不幸な結婚生活に終止符を打とうとする目論見や極秘裏のミーティングは、パドック内で日常茶飯のように行なわれている。だが、そういった話し合いは機密保持が不可欠だ。ロレンソの行動は、チアホーンやスモークで武装したにぎにぎしいレースファンたちと同程度には、密やかに行動していたようだ。

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