スーパーGT灼熱の500マイル。夏の大一番の勝敗を分けた一瞬の判断 (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 6号車は、ちょうどこの周に3回目のピットストップを予定していた。だが、セーフティカーが導入されてしまうとピット入口はクローズ状態となるため、作業ができなくなってしまう。

 しかし、6号車の決断は早かった。セーフティカー導入の2秒前にピット入口にぎりぎりで滑り込むと、レースオフィシャルの判定はセーフ。これによって、大きなアドバンテージを得た6号車はトップに浮上した。

 結果、この瞬時の判断が勝敗を決し、6号車は2位以下に31秒もの大差をつけて2連勝をマーク。6号車だけがセーフティカー導入のタイミングを利用して大きなアドバンテージを得たことで、レース後は物議を醸すことになった。

 だが、彼らは勝利を掴み取るために、やるべきことをしっかりとやっていた。チームを率いる脇阪寿一監督は語る。

「ラッキーと言われたら、それまでです。でも、そのラッキーを掴む準備は、100%ではないですけど、ある程度はできていたと思います。そう言った部分は、以前からチームに求めていることでしたから」

 今季TEAM MUGENから移籍してきた阿部和也エンジニアは、重いウエイトハンデでも速く走れるマシンセッティングを短い時間のなかで見出した。それを操る大嶋と山下は、完璧なドライビングを披露した。そしてメカニックも、GT500クラスでトップレベルのクオリティのピット作業を成し遂げた。

 こうした「チームの総合力」があったからこそ、あの106周目に逆転優勝を狙える上位まで進出し、セーフティカー導入前にピットに滑り込める位置を走行できていたのだ。「運も実力のうち」という言葉があるが、まさにこれがそうなのかもしれない。

 2連勝という結果に、就任4年目となる脇阪監督はレース後、感慨深い表情を見せていた。現役時代は3度のGT500王者に輝いた名ドライバーも、「チームをまとめる」という部分では苦労が絶えなかった。それがようやく、これまでの努力が形になろうとしている。

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