2019.07.30

最高に盛り上がった鈴鹿8耐。
だが、その結末の後味は悪かった

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 まもなく、レースディレクションは「この順位を暫定リザルトとする」として、その結果に基づき、ヤマハが5連覇を達成したものとして、8耐恒例の表彰台セレモニーが行なわれた。

 このレースディレクションの裁定に対して、カワサキレーシングチームから抗議が提出された。理由は、レギュレーションに記されている文言では、「赤旗が提示された場合、赤旗の前の周回での順位をレース結果とする」と記されているからだ。

 レースディレクションは、この抗議を受理して審議を行なった結果、カワサキからの抗議を認めて表彰式での順位を覆し、彼らの優勝という暫定リザルトがレース終了後2時間を経過した午後9時35分にあらためて発行されることになった。

 この一連の混乱については、少々の説明が必要だろう。

 レースディレクションが当初ヤマハを優勝扱いとしたのは、「赤旗中断後5分以内にピットレーンに戻ってきた車輌を正式な終了扱いとする」という、FIM世界選手権の考え方による。

 これは、たとえばMotoGPでは、ルールブックの「1.25.1 INTERRUPTION OF A RACE(レースの中断)」内で次のように記載されている。

「赤旗が提示されてから5分以内に、ピットレーンに入り、所定のピットレーン入り口タイム計測ポイントをモーターサイクルに乗って通過しなかった選手はレース終了とみなされない」【※1】

 MotoGPのみに限らず、同じFIM世界選手権であるスーパーバイク世界選手権のルールブックでも同様に、「1.26 レースの中断」で以下のように記述されている。

「レース終了と見なされる選手は:
――赤旗が提示された後、各自のモーターサイクルに乗った状態もしくは押した状態で所定のコースを使用して5分以内にピットレーンへ入らなければならない」【※2】

 これらの条文の精神に基づき、レースディレクションは5分以内にピットレーンへ戻ってきたマシンを終了扱いとしたために、転倒してマシンをピットレーンへ戻せなかったカワサキをリザルトから除外した、というわけだ。

 しかし、鈴鹿8耐が準拠するEWCは同じFIM世界選手権でも、レギュレーションにこのような「5分ルール」の文言は記されていない。少し長くなるが、EWCの赤旗中断に関するルールは「1.23 レースの中断 1.23.1 リザルト」で以下のとおりだ。

「レースディレクションが天候状態やその他の理由でレース中断を決定した場合、フィニッシュラインとすべてのフラッグマーシャルポストで赤旗が提示され、サーキットの赤色灯を灯火する。選手はすみやかに速度を落とし、パルクフェルメ(車輌保管場所)へ行くためにピットレーンへ戻らなければならない。

 リザルトは、レースの先頭走行者が、赤旗が提示されていない全周を完遂したラップで、先頭と同一周回にいるすべての選手がいた地点をもって結果とする」【※3】

(以上、MotoGP【※1】、SBK【※2】、EWC【※3】のルール和訳:筆者)

 つまり、EWCのレギュレーションでは「5分ルール」が文言として明文化されていないため、当初レースディレクションの判断した「FIM世界選手権の考え方」は適用されない、ということになる。

 さらにいえば、レースディレクションはSERTのバイクから白煙が上がった段階で、赤旗を提示してすみやかにレースを中断するか、もしくはセーフティカーを導入してレース状況をコントロールすべきだった、ということも指摘しておきたい。

 SERTがエンジンブローを起こしたのは午後7時25分というレース終了まであとわずかな状態で、そこからレイが転倒を喫するまで、トップ集団は2周以上を重ねている。レースディレクションの考えとしては、「状況が二転三転する劇的な展開が続いたレースを停めてしまうよりも、なんとか選手たちに無事に走りきってもらって、皆の記憶に強烈に灼きつく感動的な幕切れを迎えさせてやりたい」という、ためらいのようなものが判断を鈍らせたのかもしれない。