天候に翻弄されたインディカー。
大雨、雷、竜巻で観客は命がけ

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 世界最大のレース・インディ500はこれまでに3回、雨により予定していた日にレースを開催できなかった。最初は1915年で、悪天候により2日後に延期。1987年のレースは雨で翌日に延期。だがその日も雨で、次の土曜日を待って開催にこぎつけた。1997年も1日順延となり、翌日スタートを切ったが、15周で雨に。レースを終えたのはその翌日の火曜日だった。

 雨でレースが中断するケースも多々ある。今回のアイオワでもレース中に短い中断があったが、2004年と2007年のインディ500は雨によってどちらも2度の赤旗中断があった。結局、2004年は450マイル、2007年は425マイルと、500マイルを走り切らずにゴールとなった。

 インディカーでは、ストリートでのレース延期という珍しいケースもあった。2014年のトロントは雨量が多く、水はけも悪くてペースカーがスピン。レース不可能と判断され、翌日開催となった。2010年のセント・ピーターズバーグ、2011年のサンパウロ(ブラジル)のストリートレースも雨で翌日開催になっている。2000年4月のナザレス(すでに閉鎖されたペンシルベニア州の1マイルオーバル)では、CARTインディカー・シリーズのレースが雪のために延期。その週末の開催は不可能と判断され、レースは9月開催まで5カ月も延期になった。

 とにかくアメリカの雨は、驚くほど強く降ることがある。落ちてくる水の量が尋常ではなく、フリーウェイを走っていたら、突然、視界が悪くなって、時速70マイル制限の道で、全員がいっせいに40マイル以下にスピードダウン......などということがよくあるのだ。一瞬にして道路は水浸しとなり、タイヤがかきわける水の量の多さをハンドルに感じると、ちょっと恐怖を感じる。

 インディカーの場合、アイオワのほか、ゲイトウェイ(イリノイ州)、インディ500(インディアナ州)あたりでは竜巻も発生する可能性があり、そっちはもっと怖い。我々はメディアセンターなどの建物の中で待機できるので、身の危険を感じるほどではないが、こうなると観客も命がけだ。

 さて、天候に翻弄された今回のアイオワだが、ウィナーはポイントリーダーのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)だった。開幕戦セント・ピーターズバーグ、第7戦デトロイト、第9戦テキサスと、すでに3勝を挙げており、2017年にチャンピオンとなった時と同じ4勝に早くも手を届かせた。残るは5戦。2度目のタイトルが現実味を帯びてきた。

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