インディカーは終盤戦。佐藤琢磨に逆転総合優勝のチャンスは? (2ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

「時間を有効に使い、レースにより集中できる環境を整えるために、自分の周りのスタッフ、"チーム・パジェノー"の働き方を見直した。おかげで今まで以上に入念な準備を行なうことができた。今回、僕は自宅でトロントでの以前のレースのビデオをチェックし、データを見直し、そのあとにはシミュレーターも使うことでレースウィークエンドにどう臨むべきかを検討した。準備が万端なら結果を残せる。それは過去に実証して来たとおりだ。

 今週末は準備が整っていたので、ずっとハードに攻めの走りを続けることができた。インディ500でもそうできていたのを思い出した。このような参戦体制を整えたことで、トロントではマシンのフィーリングがずっとよかったし、自信を保ち続けることができた。今後のレースでも今回のような状態を作り上げることができるよう努めたい。それが自分に効果があるとわかったから。今回見つけた"いい波"に乗り続けないと」

 新境地に至ったパジェノーは、絶妙のタイミングで追い上げを開始し、2度目のタイトルに強くフォーカスしている。

 パジェノーが復活劇を見せたのと対照的に、チームメイトのウィル・パワーはまたしてもフラストレーションが溜まるレースを戦っていた。2014年のチャンピオンで、昨年は念願のインディ500優勝も実現。燃え尽き症候群に陥っているのだろうか。

 今季は未勝利で、それでもランキング5番手につけているのはさすがだが、全盛期を知る者にはおおいに物足りないレースが続いている。目指していたインディ500での連勝もならず、その勝利を手にしたのが、決して仲がいいとは言えないパジェノー。今やチャンピオンシップ獲得の可能性も小さくなり。集中力を欠いているように見える。

 パワーというドライバーは、成功のためにチームからの絶大なる信頼を必要とする。精神的安定が勝利を重ねるためのエネルギーになるタイプだ。しかし、チーム・ペンスキーは"ジョイントナンバーワン"制度で、ドライバー3人を公平に扱おうとする。2014年にチャンピオンになって以降、チーム・ペンスキーはパワーを中心に据えたチーム作りをしてもよかったが、キャラクターのまったく異なるパジェノーを招聘。ジョゼフ・ニューガーデンまで獲得した。パワーは自分が尊重されているかどうかに確信が持てなくなったのかもしれない。

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