エアレース室屋義秀に不可解判定も、次戦・千葉での王座奪還へ前を向く (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Andreas Langreiter / Red Bull Content Pool

 ところが、予選が終わってしばらくすると、室屋にとって非情の、というより、理解不能の連絡が届いた。

 1本目のフライト中、ゲート13通過後のターンで、クロッシング・ザ・トラックリミットライン(トラックの制限範囲を示すラインを越えた)のペナルティがあったため、1秒のタイム加算をし、予選順位は9位とする――。

 どう考えても、おかしなジャッジである。

 室屋は予選1本目で3位につけたからこそ、2本目はリスクを覚悟で攻めに出た。もし1本目にペナルティがあり9位だったのなら、2本目ではもっと慎重なフライトで順位を上げにいった可能性が高い。

 にもかかわらず、その前提を覆すジャッジが、しかも完全に予選が終わって、ひと息ついたころに下されるなどという事態は、過去のレースを振り返っても記憶にない。

 もちろん、室屋に限らず、パイロットが納得できないジャッジが下されることは決して少なくはないが、その場ですぐに判定されるなら、まだ理解できる。だが今回の場合は、いわば"後出しじゃんけん"。ペナルティがあったか否かの問題ではない。

 現在、各スポーツでビデオ判定の導入が進んでいるが、試合後に映像を確認して判定を覆し、すでに成立している試合の勝敗をひっくり返すようなものだ。

 この結果、室屋は翌日のラウンド・オブ・14で、最終的にこのレースで優勝するマット・ホールといきなり対戦することになった。しかも、ラウンド・オブ・14のフライトでは、予想外の風の変化(室屋のスタート直前、急に風が収まった)に見舞われるという不運もあって、完敗を喫した。

"たられば"ではあるが、予選を3位で終えていれば、いきなりホールと対戦することはなかった。また、予選3位と9位では、ラウンド・オブ・14のスタート順も変わっていたため、室屋のフライトが、突然風が変化するタイミングと合致することもなかったことになる。

 それだけを見れば、ちょっとしたアクシデントだったかもしれない。だが、そのちょっとしたことが次々に連鎖を引き起こし、結果として悪い流れを生み出した。今回のレースを振り返ると、そんなふうに見える。

「流れがちょっとアゲインストな感じは、予選のときからあった。昨日の(予選のジャッジ)は明らかに......」

 室屋は険しい表情でそう語ると、ひと呼吸おいて、「全体の流れが苦しい感じになっている」と吐き出した。

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