ドゥカティは欠点を改善できるか。ドヴィツォオーゾの忍耐も限界だ (3ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 ドヴィツィオーゾの言うとおり、今年のヤマハとスズキは長足の進歩を遂げている。両陣営とも、似たような方法でタイヤをうまく温存させる方法を獲得したようだ。ホンダの場合はやや事情が複雑だが、低速域から溢れ出るパワーとトップスピードを備えた強力なエンジンを使いこなすマルケスは、無敵と言っていい状態だ。

 一方、カル・クラッチロー(LCRホンダ・カストロール)は、「まずまずのポジションでレースを終えれば、そこに到達するのにどれくらい苦労したかなんて、人はなかなか理解してくれないものだよ」とも話す。要するに、ドゥカティのブレーキングスタビリティと優れた加速性能は、もはや十分な武器たり得ていないのだ。

 今年のマルケスは、独走してレースをコントロールするシーンが多い。機を見れば逃さずに、圧倒的なリードからペースを自在に操っている(これまでのところ、マルケスがトップを周回した回数は、2番目の選手よりも119周多い)。

 さらに、ミシュランの2019年リアタイヤ用コンパウンドの進化ともあいまって、タイヤを温存する大集団のレース展開になったのは、開幕戦のカタールGPのみだ。「今年は新技術を投入し、(リア用)コンパウンドに手を加えたんです」と、ミシュランの二輪モータースポーツマネジャー、ピエロ・タラマッソは言う。「グリップと安定性の面で、進歩を遂げています」。

 その結果、レースが始まってもタイヤを温存する様子はあまり見られなくなってきた。「序盤から最後まで速いペースでレースが推移して、全員が限界まで攻めるようになっている」と、今回の決勝後にドヴィツィオーゾは説明した。「タイヤをしっかり使って速いペースで走らなければならない。そこが去年との違いなんだ」。

 2017年を振り返れば、ドヴィツィオーゾが優勝した6戦中4戦で、最速タイムを記録したのは彼ではなかった。スムーズさと安定性を発揮して周回することが、勝利の要諦だったのだ。現在では、彼のそのふたつの武器、換言すればタイヤマネジメントと戦略は、もはや必要とされていないのかもしれない。

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