何度でも分析したい。
レッドブル・ホンダが優勝できた5つの要因

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ハミルトンは、フラップ角度を調整せずにハードタイヤで走れば1周あたり0.5秒は遅くなるという試算で、残り40周で背負うタイムロスと天秤にかけてノーズ交換を決断したと言う。どちらに転んでもハミルトンを攻略できたかもしれないが、コース上で争うことなく彼の前に出られたことは、さらに幸運だったと言える。

 3つ目は、車体性能の向上だ。

 レッドブル・ホンダは、前戦フランスGPにノーズ下整流フィン、ミラー、リアウイング翼端板、ディフューザーなどの空力アップデートを投入した。だが、これらは想定どおりに機能したとはいえ、ドライバーが訴える全体的なグリップ不足は改善できなかった。

 しかし、オーストリアGPには1セットだけ新型フロントウイングが間に合い、これを装着したフェルスタッペンのマシンは大幅にフィーリングが向上した。

 翼端付近の形状がなだらかになり、今季導入された新規定によって苦労していたRB15の後方の気流が改善。課題だった中高速コーナーでの空力性能が向上した。「フェラーリ勢にミスがなければ表彰台も難しい」としていた事前予想がいい意味で裏切られることになったのは、このアップグレードによる車体性能の底上げが大きかった。

「全体的なパフォーマンスが前回よりも格段にいい。正直言って、ここはかなり厳しいと思っていたし、それほど期待していなかった。だけど、アップデートでパフォーマンスが向上した」(フェルスタッペン)

 これによって、中高速コーナーが多く「苦手」なはずのレッドブル・リンクが、「マッチしている」サーキットへと変貌を遂げたのだ。

 4つ目は、フェルスタッペンの驚異的なドライビングだ。

 第1スティントでは、前述のようにライバルたちよりも長くタイヤを保たせて引っ張った。実は、フェルスタッペンは1周目に大きなフラットスポットを作り、通常以上に慎重にタイヤを労わらなければならなかった。だが、フェルスタッペンはそれをしっかりとやり切った。

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