MotoGP元王者が長期低迷。
ロレンソがホンダに順応する日は来るのか

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 ムジェロ(第6戦・イタリアGP)の際に悪戦苦闘を強いられていた様子は、レース中の大半でその後方にいたアレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)が目撃している。

「鮮やかさがなかったね。自信を持って走れてないように見えた。流れるように鮮やかな走りがもともと彼のスタイルだけど、コーナーでクリップにつくために、かなりバイクを減速していた。見るからに苦労していたよ」

 チームマネージャーのアルベルト・プーチは、カタルーニャGPのウィーク中に、バイクのキャラクターを大幅に変えられない憂慮を隠しきれないでいた。「ホルヘはバイクに順応できていないけれども、あながちバイクがダメだというわけでもない」とプーチ。「片方のライダーが順応できていないから、という理由でバイクの特性をガラリと変えることはできない。マルクがいい調子で勝っている以上はね」。

 そして、そこに加味されるのが、体調の問題だ。「RC213Vは身体を酷使するバイクだ」と、クラッチローは何度も指摘している。負傷という要素はロレンソの苦戦をある程度まで説明できるが、むしろ十分な準備が足りなかったことを指摘する声もある。個人スポンサーへ配慮した宣伝活動の過密スケジュールで、身体をしっかりと仕上げる時間が奪われてしまった、というわけだ。

 今年のロレンソは、それら不安要素を潰しこんでようやく光明が兆しはじめた――と見えた時にかぎって、いつも後戻りを強いられてしまう。

 レプソル・ホンダ・チームの選手として初めて臨んだ開幕戦カタールのフリープラクティス1回目では2番手につけたが、翌日のセッションでハイサイドにより転倒。第4戦翌日の事後テストは、好調に進めてきた矢先に7コーナーで大きな転倒。モンメロ(第7戦・カタルーニャGP)は目の醒めるようなオープニングラップの翌周回に転倒で終えたが、その翌日に行なった事後テストではバイクがタイヤウォールに乗り上げるほど、派手な転倒を喫してしまった。

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