君はマン島TTを知っているか。100年の歴史に挑む日本メーカーの軌跡 (4ページ目)

  • スティーヴ・イングリッシュ●取材・文・撮影 text & photo by Steve English
  • 西村章●翻訳 translation by Nishimura Akira

それ以来、2ストロークや4ストロークのさまざまなエンジンがこの公道コースを走り、多種多様なクラスとレギュレーションが設定されてきた。近年でもっとも大きな技術仕様の導入は、ゼロエミッションのTTゼロクラス創設だろう。今年で10年目を迎える、この電動バイクによるカテゴリーをリードしているのもまた、日本製のブランドだ。

 無限が製作する電動バイク「神電」は、2012年にマン島初参戦。挑戦開始後3年目の2014年に初優勝を飾ると、以後は現在に至るまで連勝街道を走り続けている。現在の本田技研工業は、企業として公式にマン島TTレースへの参戦を行なっていないが、本田宗一郎が檄文に示した熱い魂は、今もこの無限・神電に受け継がれているといっていいだろう。

 TTゼロクラスのラップレコードを持つ無限・神電だが、コース平均速度で見るかぎり、今のところはまだ時速122マイル(196km)に満たない。だが、今年はMotoGPのサポートレースとして、MotoEという電動バイクのカテゴリーもスタートする。やがて電動バイク競技は、隆盛を極めるようになるだろう。ホンダの遺伝子はこの分野ですでに先鞭をつけ、大きな存在感を発揮していることは間違いない。

 スピードの面からも、マン島TTレースを見てみよう。史上最初のレースでは、最速記録は時速40マイル(64km)をわずかに上回る程度にすぎなかった。だが、その速度は年々上昇し続け、時速50マイル(80km)にいつ到達するのか、誰が時速60マイル(96km)を上回るのか、ということも大きな関心の的になっていった。

 最高峰のシニアクラスで平均時速が100マイル(160km)の壁を越えたのは、50年の節目を迎えた1957年のことだ。この当時、練習走行は午前5時にスタートしていたので、選手たちは走行中に牛乳配達と鉢合わせる危険性もあった、という冗談交じりの伝説も残っている。それはともかくとして、この100マイル越えの記録を達成した人物は、ボブ・マッキンタイアである。

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