君はマン島TTを知っているか。100年の歴史に挑む日本メーカーの軌跡 (2ページ目)
2019年のマン島TTレースは、100回目の記念大会となった。2度の世界大戦等による中断を除き、1907年から現在に至るまで、連綿と続く長い歴史がこのレースにはある。
「このレースが好きなライダーもいれば、そうじゃないライダーもいる」そう話すのは、何度もマン島TT参戦経験を持つデイヴィッド・ジョンソンだ。
「初めてこのレースに来た時から気に入ったよ。私はオーストラリア出身で世界チャンピオンになるのが夢だったけど、チャンスに恵まれなかった。でも、いいバイクにさえ乗れれば、トップを走れる自信はあった。そこで、BSB(全英選手権)に参戦しようと思って、マン島に移り住んだんだ。
いざ、ここへやって来てみると、他のレースはすべて色あせて見えたよ。TTに参戦しようと決めて、その後に他のレースを走ってみると、まるで面白さを感じないんだ。お仕事で仕方なく走っているような気分だった。
TTの場合は、たしかに苛酷だけれども、何ものにも代えられない高ぶりがある。これは、他では絶対に得られないものなんだ」
そんな考えに至ったのは、ジョンソンだけではない。この島へやってきた何人ものライダーたちが、別人のようになって帰ってゆく。
北アイルランド出身のリー・ジョンストンは偶然、この公道レースに参戦するようになったクチだが、あっという間に虜(とりこ)になった。他のレースで満足できなくなったジョンストンは、サーキットでの走行に面白味を感じられなくなって、やめてしまったのだという。
「レースをするには、それなりの心構えというものが必要になる」と、ジョンストンはその時のことを振り返る。
「僕が公道レースに参戦したのはほんの偶然だけど、一気に魅了されたよ。その後にサーキットのレースへ戻ったんだけど、10周ほど走ると、『つまんねぇな』と思ってしまったんだ。もはや、なんの面白味も感じない。
今は公道レースの虜だよ。最高だね。公道レースに出会えた僕は幸せ者だ。だって、これを味わえる人はそう多くないんだから。公道レース以外じゃもう満足できない。僕が今、走りたいと思うのは、公道レースだけだね」
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