エアレース連勝の室屋義秀が読み切った「悪天候、難コースの攻略法」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 とりわけ、室屋の安定感が際立っていたのは、ラウンド・オブ・8だった。

 前述したようにフライト直前に風向きが変わり、新たな風の状態で飛ぶのは、ラウンド・オブ・8が初めて。つまりは、ぶっつけ本番だった。しかも、相手は予選トップのブラジョー。室屋は「ミカはフリープラクティスからずっと速かったので、ここは一発勝負でタイムを出しにいこうと思った」。

 すると、ブラジョーがインコレクトレベルのペナルティを2度も犯すなど、バタついたフライトに終始したのとは対照的に、室屋がラウンド・オブ・8全体でトップとなるタイムを記録した。

 室屋は巧みな技術で機体を操り、逆方向に変わった風のなかでも、カギとなるゲート3から4の間でベストラインを外すことはなかった。

「今回のレースのなかで一番厳しかった」という"事実上の決勝戦"を制した室屋は、完全に勢いに乗った。ファイナル4では「ミスのない100点のフライト」で、2位のマット・ホール以下を抑えると、2戦連続で表彰台の真ん中に駆け上がった。

2連勝を飾ってポイントランキング首位をキープ photo by Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool2連勝を飾ってポイントランキング首位をキープ photo by Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool ゲート3から4を制するものがレースを制す――。室屋は、そして室屋が所属するチーム・ファルケンは、鮮やかに難コースの攻略ポイントを探り当て、それを確実に実行して見せた。

 すると、この日はずっと気まぐれだった天候も、最後は室屋を祝福してくれた。表彰台のあるレースエアポートは、レース終盤は雨模様だったにもかかわらず、表彰式が始まると、にわかに西日が差し込んだ。

 まるで、その瞬間を待っていたかのように、優勝カップを掲げる勝者を自然のスポットライトが明るく照らし出していた。

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