エアレース連勝の室屋義秀が読み切った「悪天候、難コースの攻略法」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 その一方で、可能な限りの最短距離でターンし、タイムを稼ごうとするパイロットが多かったゆえ、ゲート16通過時にインコレクトレベル(水平に通過しない)やオーバーG(最大重力加速度制限の11Gを超える)のペナルティも多発した。

 室屋のファイナル4にしても、まさにペナルティと紙一重。肉眼では、その瞬間、インコレクトレベルだったように見えたほどだ。

 なるほどゲート16のフラットターンは、タイム短縮のカギではある。だが、そこでのタイム短縮は常にペナルティのリスクと背中合わせであることを考えると、そこにフォーカスすることは、安定して勝ち上がるためには得策ではない。

 ならば、本当のカギはどこにあったのか。

「とにかくポイントは、(ゲート)3から4」

 室屋がフリープラクティスを前に紅茶をすすりながら、あるいは予選のあとに話した時にも、何度か口にしていたのが、そんな言葉だった。

 その意味を、室屋はこう説明する。

「たとえば、ゲート5をどういう角度で通過してシケインに向かうかで、シケインでのスピードの乗りが時速10kmくらいは変わってくる。でも、実はそのために重要なのが、ゲート3から4をどう飛ぶか。それ次第でゲート4から5も変わってくるし、ゲート5からシケインも変わってくる。だから、3から4をいかにうまく飛ぶか。そこで全部が決まってくる」

 室屋によれば、「そこでのラインの取り方が、ほんの2、3mズレるだけで、タイムが1秒くらい変わってくる」。だから、「かなり繊細なコントロール」が求められた。

 しかも、予選からずっと同じ方向に吹いていた風が、ラウンド・オブ・14からラウンド・オブ・8の間に、180度向きを変えた。それにより、ゲート3から4の間では、「それまでは外側に膨らむ風だったのが、内側に押される風になった」と室屋。「内側に入ってしまうと、タイムが落ちてしまうので、同じラインをキープするための微妙なさじ加減がかなり難しかった」。

 だが、そうした条件の変化に対応しながら、室屋がこの難コースを攻略していったことは、結果にも表われている。室屋は予選も含めた各ラウンドで、驚異的なスーパーラップこそ記録しないものの、確実に相手を上回るタイムで勝ち上がっていった。

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