2019.06.10

室屋義秀が最後のエアレース王者へ。
勝敗のカギを握る新ルールへの対応

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 そこで室屋が所属するチーム・ファルケンをはじめ、数チームがルール変更を提案していたところ、反対するチームはなく、それが今季実現したというわけだ。

 今回のルール改正では、12Gに達した時点でDNFとなるのは同じだが、時間に関係なく、11Gを超えなければノーペナルティとなった。室屋曰く、「10.5Gでずっとキープしてられるので、(操縦桿を)戻さなくていい。ただ、飛び方が違うので、この制御が結構難しい」。

 室屋は、右手の親指と人差し指でわずかな隙間を作り、「戻さなくてもいい、と言っても、操縦桿の位置にすれば、これくらいの差しかない」と言い、こう続ける。

「どうしてもマッスルメモリー(筋肉で覚えた感覚)で動いてしまうし、実際のレースになれば、Gをかけたほうが速いので(操縦桿を)引きたくなってしまう。12Gを超えたらアウトなのは今までも同じなので、それを超えることは少ないが、(今までは11Gを超えても、0.6秒以内ならノーペナルティだったので)11Gで止めるのは難しい。相当練習するか、機械的なサポートシステムが必要になる」

 そのサポートシステムについては「詳しいことは言えない」と、口をつぐむ室屋だが、開幕戦の結果については「準備の差で違いが出たんじゃないかな」と、余裕の弁だ。

 では、今回のルール変更は、パイロットにはどう受け止められているのだろうか。

 ノーペナルティの制限が10Gから11Gに引き上げられた分、基準が緩くなったとも言えるし、0.6秒以内であろうと11G以上をかけることができなくなった分、厳しくなったとも言える。果たして、実際のところはどうなのか。

 今季開幕戦で見られた現象から判断した、現時点での室屋の結論はこうだ。

「どちらかと言えば、”上限が下がって厳しくなった”のではないかと思う。10.5Gに合わせてキープするといっても、実際はターンで速度が落ちてくるので、それに合わせてGも下がる。その変化に合わせて操縦桿の位置をビシッと決めて、同じGをキープするのは……至難の業と言ってもいい」

 それは、開幕戦でオーバーGのペナルティが多発したことからも想像がつく。理屈のうえでは、少しGを落とせばいいだけの話でも、昨シーズン最終戦からわずか3カ月程度の準備期間で適応するのは、それほど簡単ではなかったということだ。

 もちろん、今後、各パイロットの新ルールへの対応が進めば、ダブル・プルに代わる新たな操縦法が生まれる可能性も十分にあるだろう。