狂喜乱舞。イタリアGPでイタリア人がイタリア製バイクで初優勝 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 しかし、チームメイトのドヴィツィオーゾ、そしてランキング首位の世界王者マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)と互角以上のバトルを演じ、最後にわずかな隙を突いて彼らの前に出て抑えきったペトルッチは、そのような批判を自らのイタリアGP優勝でねじ伏せた格好だ。

 レース展開は、名勝負と呼ぶにふさわしい内容で、優勝の瞬間は、ドゥカティのピットボックスではチームマネージャーのジジ・ダッリーニャをはじめとする首脳陣が、まさに狂喜乱舞といった様相を呈していた。イタリアGPで苦労人のイタリア人選手が、イタリア製バイクで初優勝を勝ち取ったのだ。もちろん、満場の観客も大喜びである。

 優勝後にペトルッチは「最終ラップに誰かが仕掛けてくると思ったら、まさにそのとおりの展開になった」と、この日のレースを振り返った。

「1コーナーで、マルクとアンドレアが(自分の後方から)スリップストリームを使って、ふたりとも抜きにかかってきた。このままだと3位か4位になってしまうと思ったけど、ふたりが少しワイドにはらんでインを突けそうだったので、そこを狙った。(インを突いたときに)アンドレアにバイクを引き起こさせてしまったのは申し訳なかったけど、今日は初優勝の大きなチャンスだと思ったので、最終ラップはがんばったんだ」

 妙に謙虚さを感じさせるこんなコメントからも、彼の人の好さの一端が垣間見える。そしてペトルッチは、さらに「この勝利はチームメイトのアンドレアに捧げたい」と続けた。

「開幕前から、我が子というか、弟のように扱ってくれた。子どもにしては体格がでかいけどね」と笑いを取りながら、ともにトレーニングに取り組み、心身ともに鍛えてくれたことへの感謝を表した。ファクトリーライダーにふさわしくないという口さがない外野の批判は、当人の耳にも届いていたようだが、精神的に吹っ切るきっかけを与えてくれたのもドヴィツィオーゾだった、と明かした。

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