佐藤琢磨、周回遅れから怒涛の追い上げ。
伝統のインディ500で3位入賞

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 カーペンターはターン3で琢磨のインサイドに飛び込んできた。彼自身、抜き返せたと思ったことだろう。しかし、琢磨は譲らず、2人はサイドバイサイドのままコーナリング。アウトからの高いスピードでコーナーに飛び込んだ琢磨が4番手の座を守った。このバトルには観客席が大きく沸いた。

 ゴール前10周、琢磨はジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)をパスする。場所はターン3。カーペンターに競り勝った時以上の切れ味の鋭さで、パジェノーのチームメイトをアウト側から抜き去った。

 勢いづく琢磨。スピードウェイに集まった30万人を超すファンは、パジェノーとロッシの死闘を見守りつつ、琢磨の可能性にも期待を抱いたようだ。歓声はさらに高まった。ウィナーとなったパジェノーも、琢磨が襲いかかってくるのを覚悟したという。

「前を走るのがあと2台になった時は、"やるしかない!"と思いました。でも、パジェノーは強かった。一度は2ラップダウンになりながら、ここまで挽回できたのですから、チームがすばらしい働きをしてくれたということです。今日は優勝したシモン・パジェノーにおめでとうと言いたいですね。アレクサンダー・ロッシと私は、持てる力のすべてを振り絞り、戦い切りました」と琢磨は語った。

 勝つことはできなかったが、最後までレースを大いに盛り上げる走りを見せ、トップ3フィニッシュを達成したことで、その表情は清々しかった。

 これで琢磨はランキング4位に再浮上。初のシリーズタイトル獲得に向けた戦いを続ける。

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