佐藤琢磨、周回遅れから怒涛の追い上げ。伝統のインディ500で3位入賞 (2ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 いつもどおり、バトルが過熱する終盤にアクシデントが重なり、最後のリスタートがゴールまで残り13周で切られることになった。フルコースコーションが出る直前にトップに出ていたロッシを先頭にしてレースは再開されたが、グリーンフラッグに合わせた加速が絶妙だったパジェノーがトップを奪い返した。

 このあと、彼らはさらに3回もポジションを入れ替えた。残り2周でロッシがターン1でトップに立った時は、大逆転での優勝が決まったかと思われた。しかし、パジェノーは冷静かつハングリーだった。1周半をかけ、199周目のターン3でロッシを抜き返した。ロッシは最終ラップのターン3でも、ターン4からゴールラインまでの加速でも逆転を目指したが、一歩及ばず。0.2086秒の差でパジェノーがウィナーとなった。

「人生最大の夢が叶った。本当に信じられない。予選前のプラクティスからマシンが速く、あとは自分がその力をフルに発揮し、不運に見舞われないことを祈るだけだと考えていた。以前に慎重になりすぎて勝機を失った経験から、今年はマシンを信じて全ラップ攻め続けた」と、パジェノーは語った。

 彼ら2人のすぐ後ろでゴールしたのが琢磨だった。最後の13周、彼はトップを走ることも、2位に浮上することもなかったが、ドラフティングを使っての大逆転が可能なのがインディカーのレースだ。琢磨は虎視眈々と前を行く2台を突くチャンスを伺っていた。

 最後のリスタート時、琢磨は5番手だった。レース序盤にピットのミスで周回遅れに陥ったが、100周以上をかけてリードラップに復帰した琢磨は、最後のピットストップがフルコースコーションの直前というタイミングのよさから優勝争いに加わることになった。

 琢磨はリスタート直後、ターン1でエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)をアウトからパス。インディ500で3回もポールポジションを獲得しているインディアナ州出身のカーペンターは、インディ500優勝を究極の目標に掲げている。その彼を豪快にアウトから抜き去ったのだ。

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