レッドブル・ホンダ「モナコSP」投入。セナも勝った秘策でいざ勝負 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 つまり、時と場合によっては、モナコのレースでは最速を極めることだけではなく、コースにとどまり続けることのほうが重要なこともある。

 昨年のダニエル・リカルドも、普通のサーキットならMGU-Kが壊れた時点でリタイアしていたはずだ。1992年のセナも、走らないマシンで無理矢理プッシュすれば、ベルガーのようにメカニカルトラブルやアクシデントでリタイアしていたかもしれない。彼らは、マシンが遅くてもコース上にとどまり続けたから、勝つことができたのだ。

 そんなモナコに向けて、ホンダはこれまでとは異なるアプローチで"モナコスペシャル"の準備をしてきた。

 田辺テクニカルディレクターはこう語る。

「我々(PUサプライヤー)としては走行時間を妨げるようなことがないように、とにかくクルマを止めないことを第一に準備しています。センサー出力がおかしいといった何らかの不具合が多少出たとしても、その時にどういう対応をすれば走り続けさせられるか、というところです」

 年間3基しか仕様が許されない現在のレギュレーションでは、どのメーカーも異常が起きるとパワーユニットを守るために、予防策として自動的にパワーを抑えたりすぐに止めたりする。パワーユニットの各所に張り巡らされたセンサーの数値に異常があった場合、それを検知して自己防衛機能が働くようにセットされているのだ。

 しかし、モナコでは走り続けることが重要だ。それは歴史が証明している。

 そこで今年のホンダは、それを念頭に置いたモナコスペシャルとでも言うべき制御プログラムを用意してきたという。

「パワー感度の高いサーキットだと、フェイル(自己防衛モード)に入って何kW落ちた時、そのまま走っても意味がないレベルだったりします。でも、モナコはパワー感度が低いんで、安全策を採っても(その影響は少なくて)止めちゃうより走り続けていれば、ある程度のところまで行ける可能性もあるわけです。また、予選であれば(パワーが出ているかどうかよりも)何よりもトラフィックのないクリアラップでアタックすることのほうが大事だったりします」

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