トップ走行割合、実に70%。マルケスの神がかった速さにライバル脱帽 (4ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison  西村章●翻訳 translation by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

「マルクは、べつにビックリするようなブレーキングをしていない」と証言している。「ブレーキングでは、どこのコーナーでもマルクを捕まえることができそうだったよ」

 この点について、マルケスは今回の優勝後に、以下のように説明をしている。

「今、リスクを賭けているのはブレーキングポイントじゃなくて、旋回だね。キツいのはその部分なんだ。もっとエンジンバイクなら、去年ドビやホルヘがどんなふうに乗っていたのかもわかってくると思う」

 マルケスの上記の言葉は、昨年後半にドゥカティファクトリーがトップスピードと加速性で勝っていた点を指している。だが今では、旋回速度と加速性は、むしろマルケスの強みである。ル・マンの最終区間セクター4で0.1~0.2秒を稼いでいたのが、その証拠だ。

「あそこはブレーキングポイントで損をしないし、コーナーでがんばればいいだけだからね」

 ブルノ(第10戦・チェコGP)やレッドブル・リンク(第11戦・オーストリアGP)はドヴィツィオーゾの得意コースだったが、それももはや過去の話となりそうである。

 日曜の決勝で、マルケスはフロント用にミシュランのソフトコンパウンドタイヤを装着して勝利を収めた。彼がフロント用にソフトを入れてレースに臨んだのは、2016年のオースティン(第3戦・アメリカズGP)に続き、今回がわずか2回目だ。

 これは、路面温度が19℃という低温だったことにも理由はあるが、今年型のRC213Vがフロントタイヤにあまり負荷をかけないためでもある(マルケスとは対照的に、2018年型のマシンに乗る中上貴晶はただひとり、フロントにハードタイヤを装着してレースに臨んだ)。つまり、旋回性に勝る特性のソフトコンパウンドを、今は使いこなせているのだ。

 しかし、このソフトタイヤをうまく使うには、それなりの注意も必要だ。ソフトを使うということは、熱が入り過ぎる危険性と背中合わせで、近年のRC213Vはずっとこのクセに悩まされてきた。「他のライダーの後ろにつくと、オーバーヒートするよ」と、マルケスはスリップストリームで他車の後方についたときに空冷効果を得られない場合を例に挙げている。

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