雨絡みの展開でJ・バトンが神業。F1の経験がスーパーGTで生きた (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 この時点で雨は上がっていたものの、路面はまだ完全にドライコンディションと言える状態ではなかった。しかし、天候が回復していくのは明らかで、1号車はすぐさまドライタイヤへの交換を決断する。リスクは少なからずある状況だったが、ここからバトンが元F1王者の底力を見せた。

「僕が乗り始めた時はダンプ(湿っている)コンディションで、まだドライと言える状況じゃなかった。だから正直、大変だったよ。最初の2周はウェットタイヤを履いているGT300のマシンにも抜かれた。

 ただ、徐々にタイヤが温まってきたので、ペースを上げていくことができた。こういうコンディションのレースはF1でも経験があったから、それがすごく生きた」(バトン)

 刻々と路面コンディションが変わっていく状況において、バトンの判断力・対応力はF1時代から人一倍長けていると評されていた。実際、バトンがF1で勝利したレースを振り返ると、雨絡みの展開だったことも多い。

 いくつか例を挙げると、まずは2006年のハンガリーGP。このレースはウェットコンディションでスタートし、そこから徐々に路面が乾いていく展開だった。ドライタイヤに交換するタイミングでライバルが混乱するなか、バトンは冷静に対応して14番手スタートからトップに浮上。自身のF1初優勝を飾るとともに、第3期ホンダF1プロジェクトに唯一の勝利をもたらした。

 2010年のオーストラリアGPも、雨が上がって徐々に路面が乾いていく内容だった。スタート時は各車ウェットタイヤを履いていたが、いち早くドライタイヤに交換したのがバトンだった。それが功を奏し、逆転でトップを奪取。マクラーレン移籍後、初の優勝を飾った。

 また、バトンのF1でのベストレースのひとつにも挙げられる2011年のカナダGPもそう。雨模様のレース序盤は、彼自身もアクシデントに巻き込まれ、一時は21番手まで後退。レースは大雨によって一時中断となった。だが、天候が回復して再開されると、バトンはドライタイヤで猛追を開始。そして最終ラップ、トップのセバスチャン・ベッテル(当時レッドブル)がミスした隙に逆転し、優勝を飾った。

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