鈴鹿が一体になった日。小林可夢偉の3位表彰台にみんなが涙した (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

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 チーム代表のモニシャ・カルテンボーンやチームマネジャーのベアト・ツェンダー、エンジニアやメカニックまで含めて、ザウバーの面々はそのことをよくわかっていた。だから可夢偉にもっといい結果を、できることなら表彰台を獲らせてやりたい、という思いは言葉や行動の端々に感じられた。

 そして、ザウバーのマシン特性を考えてシーズンを見渡せば、鈴鹿で行なわれる日本GPがザウバーと可夢偉にとって、最後のビッグチャンスになりそうだということは明らかだった。

 だからこそ、チームはこの鈴鹿に合わせてフロントウイングなど最後の大型アップデートを持ち込んできたし、日曜日の決勝前にも異例のピットストップ練習を行なうなど、チームのあらゆるスタッフが可夢偉のために全力を尽くし、可夢偉にすばらしい結果を手にしてもらいたいという思いで動いていた。

 その思いに応えるように、可夢偉は予選4位。3位のジェンソン・バトン(マクラーレン)のギアボックス交換で繰り上がって、決勝はレッドブルの2台に次ぐ3番グリッドからのスタートとなった。今思い返してみても、ザウバーのような中堅チームが実力でマシンをこのグリッド位置につけたというのは、驚異的なことだった。

 可夢偉はスタートで2位に浮上し、鈴鹿は大歓声に包まれた。ザウバーのスタッフだけでなく、鈴鹿に詰めかけた大観衆全員の気持ちまで一体になっていた。その後、可夢偉は優れた戦略で浮上してきたフェラーリのフェリペ・マッサに先行され、3位争いの相手はマクラーレンのバトンになった。

 決して楽な展開ではなかった。可夢偉のタイヤ交換の5周後にタイヤを換えたバトンのほうがペースは速く、じわじわと後方に迫り、ついにはDRS(※)圏内まで襲いかかってきた。それでも可夢偉はなんとか持ちこたえ、3位を死守する。ピットウォールではカルテンボーン代表が祈るように手を合わせてモニターを見守り、ツェンダーはモニターを直視できないほどに緊張していた。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

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