トップ快走のマルケス、まさかの転倒。得意中の得意コースで墓穴掘る (2ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison 西村章●翻訳 translation by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 誰も彼に追いつけなかった。勝利を簡単に掌中に収めそうにも見えた。2週間前のアルゼンチンGPで9秒の大差をつけて勝ったときと同じように、圧倒的な距離を開いていた。ここは、今まで彼が走行した47セッションのうち39回でトップタイムを記録した、得意中の得意コースなのだ。

 マルケスはレース後に、「限界を超えていたわけじゃなかった」と、1周目から8周目までの走りを振り返ってそう述べた。「フロントタイヤを温存するために安定したペースでスムーズに走っていたんだ」

 おそらく、すべてがあまりに順調すぎたのだろう。それ以外には、珍しく集中力を切らせて転倒してしまったことの理由が見つからない。

 バックストレートエンドから低速旋回する9周目の12コーナー進入は「3メートル、ブレーキが遅かった」と説明した。旋回動作は「いつもよりバンク角が2°深く、ブレーキの効力も少し低かった」のだとか。そのためにフロントタイヤがわずかに限界を超え、マルケスは転倒に至る。そしてその結果、3.5秒後方にいたロッシにトップを譲ることになった。「僕のミスだね」とマルケスは潔く認めた。

 マルケスがノーポイントに終わり、ランキング首位に立ったアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ミッション・ウィナウ・ドゥカティ)は、マルケスすらも「すべてをコントロールできるわけじゃないんだ」と指摘した。「彼はたいていの場合、うまくやるけど、いつもというわけではない。これは、チャンピオンシップにはいいことだね」

 マルケスは、過去にもトップを走行中に転倒したことがある。2014年のサンマリノGPや、2016年のオーストラリアGPがその好例だ。だが、これらはいずれも王座を確定させたあとか、ほぼ手中に収めた状況での出来事だ。

 今回については、けっして油断していたわけでもなく、また、無理をしていたわけですらない。たとえばマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は金曜のフリープラクティスではトップタイムだったが、土曜午前のフリープラクティス3回目が悪天候でキャンセルになったため、バイクのセットアップが十分ではなく、午後の予選では苦戦を強いられることになった。

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