佐藤琢磨、ポールトゥウィンの舞台裏。インディカー参戦10年目の進化 (3ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

本番でも、琢磨はスタートからレースのイニシアチブを握った。その重要性を強く認識していた彼は、1速のギヤを低いものに変更してもらい、チームメイトのレイホールを突き放す。1周目にビシッと差をつけると、その後はリードをジリジリと広げていった。

 3ストップ作戦を採用し、ピットタイミングを若干早めに設定した琢磨陣営は、2ストップ作戦のブルデイをレース半ばでパス。ミスなく走り切れば優勝できる状況を手に入れた。この後に出されたフルコースコーションも不利には働かず、残り25周で切られたリスタートも無難に決めて、逃げ切り体制に持ち込んだ。

 残り5周、琢磨がターン8で飛び出した。ランオフ・エリアに乗り上げる時に一瞬ジャンプしたが、芝生の上を走ってコースへ復帰。トップの座は保ったままレースを再開し、チェッカーフラッグを潜った。

「最後のリスタートの後は、2位以下との間隔を2秒ぐらいに保ち続けることを目指していました。懸命にプッシュしつつ、燃費をセーブしながら走りました。しかし、必要な時にはプッシュ・トゥ・パス(一時的にターボのブースト圧を引き上げるシステム)を使いました。最後の10周はかなりハードで、ターン8前のバンプでバランスを崩し、コースオフしました。でもあのコーナーは、飛び出してもまっすぐに行けば、マシンにもタイムにもダメージがないとわかっていました」(琢磨)

 予選、レースと最速を続けて優勝を飾った琢磨。好調のディクソンとチップ・ガナッシ・レーシングを真っ向勝負で打ち負かしての勝利には大きな意味がある。ディクソン自身、「今日は琢磨がすばらしかった。RLLがベストのレースを戦ったということ。我々だって勝ちたかったが、2位でポイントを稼げたことで満足したい」と語ったほどだ。

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