佐藤琢磨、ポールトゥウィンの舞台裏。インディカー参戦10年目の進化 (2ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 今年のバーバー・モータースポーツ・パークの路面は、昨年のものと比べてグリップが大幅に低下しており、チーム・ペンスキーとアンドレッティ・オートスポートという、このコースを得意としてきた強豪2チームが対応し切れなかった。驚いたことに、両チームのドライバーは誰ひとりとして予選のファイナルに進むことができなかった。開幕から2戦、連続でポールポジションを獲得したウィル・パワー(チーム・ペンスキー)でさえ、予選7位だった。

 予選ファイナルは、ユーズド・レッドをどれだけうまく使えるかが勝負になる。3段階ある予選だが、レッドは2セットしか供給されないからだ。ここで琢磨は、ブラックでの連続周回にトライ。しかし、その判断が正解ではなかったと気づくと、ピットに滑り込んでレッドにスイッチし、すぐさまコースに戻った。

 ウォームアップ1周の後、計測可能なのは1周だけだった。それが成功しなければ、次のラップにはレッドのグリップはもう低下していただろう。琢磨はその1周だけしかないチャンスをものにして、ポールポジションを獲得した。琢磨がトップの座から押し出したのはチームメイトのレイホールだったから、RLLがフロントローを独占することになった。

 これまでの2戦で思いどおりのパフォーマンスを発揮できずにいたRLLだが、バーバーの予選では一転して大活躍。その影にはオフの間にエンジニアたちが進めた2018年のデータの再解析、そして、ベテランエンジニアの加入があった。それにより、今までとは異なる角度からの視点や分析がプラスされ、新たに提案されたセッティングがトライされ、それが成果につながったのだ。琢磨は予選3段階でマシンを研ぎ澄ますことに成功。周回を重ねるたびに速くなっていった。

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