山本尚貴は「F1に乗りたい。でも......」。国内二冠王者の本音と現実 (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

「レースで経験してきたことのすべてが、今のこの結果に大きく関係していると思います。やっぱり、負けたレースから学んだことのほうが多いですね。

 レース人生を振り返ると、負けたレースがほとんどです。でも、その負けたレースから目を背けずに、『どうして負けたのか?』『なぜ失敗したのか?』としっかり分析してこられたことが、今につながっている。

 人間は、失敗したことから逃げたくなります。そして負けた時、『クヨクヨするなよ』と言う人もいます。しかし僕は、失敗した時や負けたことの中にこそ(勝つための)ヒントがあると思っています」

 その努力の結果、山本はダブルチャンピオンという栄光を勝ち取った。それにより、山本はF1参戦に必要なスーパーライセンスを得るための「スーパーライセンスポイント」の規定値をクリア。F1に参戦の可能性を手にしたのだ。

 スーパーGTの最終戦から2週間後、山本はF1アブダビGPを訪問した。その様子は国内外のモータースポーツメディアで報じられ、F1挑戦への期待の声が高まった。

 当時の状況、そして今の心境について、山本はこのように語る。

「あの時の話をすると、(国内二冠を獲得した後)F1に乗れるチャンスが0%ではなかったので、『そんなチャンスがある身でありながら、わざわざ自分からチャンスを手放すことだけはしたくない』と考え、アブダビGPに行かせてもらいました。まずは、今のF1の世界を知ることが大事だと思ったので。

 やっぱり、F1は特別な世界。あらためて『F1で戦ってみたい』という、レーシングドライバーとしての純粋な想いは強くなりました。結果的にF1のレギュラードライバーのシート獲得は叶いませんでしたが、今でもその想いは持ち続けています。

 F1ドライバーになることが『乗りたい』という気持ちだけでは実現できないハードルの高いステージだということは重々理解しています。また、自分としても『絶対にF1を目指すんだ!』と、そこまで強く言い切れない歯がゆさもあります。

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