F1ニューマシン解体新書。
異なる方向性のトップ3、最適解はどれだ?

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 SF90の空力コンセプト自体は、どちらかといえばメルセデスAMGよりもレッドブル型だ。パワー偏重のマシンから、どれだけ均整の取れた総合力の高いマシンへと変貌することができるか。

 フロントウイングには、他の2チームが採用しなかった特殊な形状のフラップを採用した。翼端付近の高さを抑えたフィンによって、発生するダウンフォースよりも、規定変更で失われたアウトウォッシュ気流を精製させようという手法だ。

 SF90をドライブしたシャルル・ルクレールは、「新車だけど、すでにしっかりと確立されたマシンのようなフィーリングだ。気持ちよく走れるし、(トップタイム記録とはいえ)タイムを意識した走りをしていない」と、SF90の初期フィーリングを語っている。

 新体制へ移行したチームは、技術陣を知り尽くしたビノットを筆頭に風通しがよく、透明性の高い組織に生まれ変わろうとしているという。その成否にも、マシン開発の今後がかかっている。

 昨季のレッドブルは0.5秒も速いF1界最速の車体でパワー差を挽回し、勝利をもぎ取ってきた。パワーユニットをルノーからホンダにスイッチした今季は、マシン作りをさらに一歩、究極へと突き詰めてきた。

 ルノー時代はカスタマーとして、完成品のパワーユニットを受け取り、それに合わせてマシンを作るしかなかった。しかし、ホンダとタッグを組むことで、「こういうサイズに納めてくれれば、こうした空力的ゲインが得られるが、パワー側のロスはどのくらいか?」という調整をしながら、車体性能とパワーユニット性能の最高の妥協点を見つけ出す作業が可能となった。

 これにより、マシンパッケージ全体としてさらに高いレベルへ到達させようとしているのがRB15だ。

 従来の空力コンセプトを進化させ、ただでさえコンパクトだったリアカウルはホンダとの緊密なコミュニケーションによって、さらに内側へとタイトに絞り込まれた。この改良によって、レッドブルの空力性能はさらなる高みへと進化しそうだ。

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