F1ニューマシン解体新書。
異なる方向性のトップ3、最適解はどれだ?

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 しかし、彼らはそのパッケージで5連覇を達成してきた。昨年はその達成が危うい場面もあったが、彼らは冷静に自分たちの弱点を見詰め直し、その弱点を潰すことによって、再び頂点に立つことが可能だと考えた。その答えが、この新車W10だ。

 ルイス・ハミルトンによれば、「このマシンの挙動特性はW09と同じだけど、一部は異なる特性もある。それこそが、僕がずっとチームに依頼し続けてきたものなんだ」としている。これまでの弱点を克服し、ドライバーの望むものまで加えることができたのならば、今年のメルセデスAMGはかなり強力なパッケージと言えそうだ。

 一方のフェラーリは昨年、パワーユニットを大幅に進化させたことで、出力でメルセデスAMGを上回った。車体性能ではまだ後れを取っていたものの、パワーを武器に前半戦は勝ち星を拾っていった。

 今季はそのパワーユニットの優位を、空力性能の向上へと転換する戦略を採っている。

 今年のSF90は、コクピット後方のエアインテイクが小さな三角形になり、空気抵抗が減った。そればかりか、エンジンカウル上部を大幅にコンパクトにすることで、後方への気流をスムーズにリアウイングへ当てて空力効率を向上させている。

 これを実現できたのは、パワーユニットの冷却補器類のレイアウトを見直し、冷却フルードの改良によって冷却効率を向上させ、カウル内の構造物をコンパクトにすると同時にサイドポッド部へ集中させたからだ。

 これらの改良によって、フェラーリは課題であった空力性能を向上させ、メルセデスAMGとレッドブルに勝る総合力を手に入れようとしている。

 テクニカルディレクターからチーム代表へと昇格したマッティア・ビノットはこう語る。

「マシンのリアは、非常にコンパクトでスリム。それを実現するために、パワーユニットのレイアウトの再検討に多大なる努力を注いだ」

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