F1ニューマシン解体新書。異なる方向性のトップ3、最適解はどれだ?

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 バルセロナ合同テストを前に、2019年型マシンが出揃った。テクニカルレギュレーションが変更されたことで、今季のF1マシンはルックスが変わった。各チームはどのように新レギュレーションに対応し、ニューマシンを作りあげてきたのか。

バルセロナ合同テストで走りを披露したレッドブル・ホンダバルセロナ合同テストで走りを披露したレッドブル・ホンダ ただ、レギュレーションは変わったものの、マシンのトレンドは昨年型からの正常進化型だ。というのも、今季の新規定はマシンの空力コンセプトを根幹から一変させるものではないからだ。

 まず、変わった点を挙げるならば、オーバーテイクの促進を目指すため、その阻害要因となっていた「乱流発生を抑える」ことを目的に、フロントウイング、バージボード、リアウイングなどが変更された。

 マシン周辺の乱れた空気を外に掃き出す「アウトウォッシュ」と呼ばれる気流が、後続車両にとってはダウンフォースの発生量を不安定にさせる。そのため、後走車はコーナーで前走車との間合いを詰められず、その後のストレートでもオーバーテイクを仕掛けることが難しかった。

 しかも、2017年にマシンとタイヤがワイドになってから、この傾向はさらに強くなってしまった。そのことを受けて、このアウトウォッシュと、乱流を発生させる要因となっているフロント周りの複雑な空力付加物を制限した。そしてその代わりに、前後のウイングを拡大することでダウンフォースの安定性を確保しようということになった。

 そのため、マシン全体としての基本的な空力コンセプトは変える必要がない。よって、大半のチームは昨年型からの正常進化型という着地点に至ったというわけだ。

 そんななかでも、トップ3チームのマシン作りは、はっきりと方向性が異なっている。

 まず、5連覇中のメルセデスAMGは、もともとロングホイールベースでレイク角(前傾姿勢)をつけずに空力性能を稼ぎ、パワフルなパワーユニットでバランスを取る平均点の高いマシンだった。今年のW10も、この路線は踏襲している。3強のなかで唯一、チーム体制が大きく変動がなかったこともあり、ある意味では当然の帰結と言えるだろう。

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