MotoGP中上貴晶、勝負の2年目。「自分の手で来季シートを掴む」 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文・撮影 text & photo by Nishimura Akira

 Moto2には電子制御がなかったので、マシンセッティングと自分の乗り方に合わせ込んで走っていました。MotoGPでは、それにプラスアルファして電子制御を使えるので、それを使いこなしながら高いパフォーマンスで45分間ずっと、紙一重の操作を常に続けなければならない。それが二輪最高峰の醍醐味であり、難しさでもあると思います。

 サーキットによって選択するタイヤも違うし、制御のセッティングも違います。だから、あるコースでうまく走れたからといっても、次のコースでも同じようにうまく走れるわけではない。タイヤの消耗具合によって、スイッチを切り替えるタイミングも違います。

 トルク、エンジンブレーキ、トラクションコントロール......電子制御は人によって違うし、正解というものがないので、組み合わせは今でも難しいところがあります。今も悩みのタネですね。わかればわかるほど、さらに奥深さも見えてくる。どこまで突き詰めればいいのか、チーフメカニックやテレメトリー担当者とミーティングをしながら、日々すごく勉強になっています」

―― 今の自分に足りないものは、何だと思いますか?

「かなりレベルの高いマシン操作をしていくなかで、競り合いは常についてまわります。メンタルでもフィジカルでも、もう少しマージン、考えられる余裕がほしいなと感じました。

 去年はスタート直後からチェッカーまで、いつもいっぱいいっぱいの状態だったので、レース戦略やバトルの組み立てを考える余裕もあまりありませんでした。タイム差で見ればすぐに抜けるはずのライダーでも、抜くのに時間がかかったりして、もったいないレースをしていたなと思います。

 簡単に言えば、抜こうという相手に対して距離がありすぎたんですね。オーバーテイクするときに、たとえばチャンピオンのマルク(・マルケス)やバレンティーノ(・ロッシ)たちは、オンボードカメラで見える以上に近い距離で、相手のリアタイヤと自分のフロントタイヤの距離がほとんどないようなところで接戦をしているんです。

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