エアレース開幕戦で室屋義秀が完全優勝。「新ルール」に見事に適応 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Andreas Schaad/Red Bull Content Pool

 要するに、多くのパイロットが新基準に引っかかった結果のオーバーG多発だったわけだ。

 話を再び、レースデイ当日に戻そう。

 この日は朝から、前日とはまったく逆方向の風が吹いていた。つまり、ゲート4からスタートゲート方向への風である。

 ただし、「レース開始の時間(午後1時)には、予選の日と同じ風向きに変わる予報だった」と室屋。多くのチームはその予報をもとに、予選と同様の気象条件を想定してレースの準備を進めていた。室屋が続ける。

「少し(風向きの変化が)遅れたとしても、ラウンド・オブ・8のころには昨日の風に戻るだろうと思っていた。レースエアポートでは、すでに予報通りの風向きになっていたし、誰もがそう考えていた」

 ところが、風向きはまったく変わることなく、むしろ強さを増していく。そんな予期せぬコンディションの影響をもろに受けたのが、ゲート14だった。

 ゲート13を通過し、ゲート14へ向かうライン上で、機体はちょうど強い追い風に押されてしまう。本来なら、少し回り込むように角度をつけてゲート14に入り、その後のフィニッシュゲートへはより直線的に向かうのがベストラインなのだが、それをやろうすると、風に流されてゲート14に入り切れない。室屋が語る。

「(昨季の基準で)Gをかけられれば、グッとターンしてギリギリで(ゲート14に)入れる。でも、それをやってしまうと、今季はオーバーGのペナルティになるのでGをかけられない。だから曲がり切れず、(インコレクトレベルの)ペナルティがすごく多かった。あそこのライン取りは非常に難しく、どうラインを取ればいいのか、わかっていないチームが多かったのではないかと思う」

 ただでさえ難しいコンディション。それに加えて、いつか風向きが変わるはずだという思い込みもあるから、パイロットたちは半信半疑でレーストラックへ――。インコレクトレベルが何度も起きた理由である。

 つまり、インコレクトレベル多発の直接的な原因は、風の影響だ。だがしかし、そこに密接に関係していたのが、実は前日までと同じオーバーGのルール変更だったのだ。

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