ルール改正等エアレースは波乱含み。室屋義秀が描く総合優勝への構想 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

 そして、もうひとつのルール改正が、オーバーG(最大荷重制限の超過)に対するペナルティの変更である。

 昨季は10Gを最大荷重制限としながらも、実際にDNF(ゴールせず)のペナルティとなるのは12Gに達した場合のみ。12G未満の荷重であれば、それがかかっている時間が0.6秒未満ならノーペナルティ。0.6秒以上で2秒のタイム加算とされていた。

 しかし、今季は、12Gに達するとDNFになるのは同じだが、11G未満ならノーペナルティ。11Gに達した場合は、その時間にかかわらず、1秒のタイム加算となった。事実上、最大荷重制限が緩くなったとも言えるし、"グレーゾーン"が認められなくなり、厳しくなったとも言える。

 しかも、今回のルール改正の厄介なところは、例えば、ひとつのバーティカルターンの間に、11Gを超える瞬間が2度あれば、1秒加算のペナルティを2度取られることだ。

 パイロットたちはこれまで、従来のルールを逆手に取り、0.6秒未満の範囲で11G以上をかけて飛び、一度10G以下に落としてから、再び0.6秒未満の範囲で11G以上かける、というテクニックを使っていた(これは2015年に室屋が"開発"し、その後、他のパイロットにも広まった)。だが、今季同じことをやれば、1秒×2=2秒のペナルティを受けることになるだけに、「ちょっとしたルール変更のようでも、実際の操縦の仕方はかなり変わる」と、室屋は言う。

 オーバーGを避けようとスピードを落とし過ぎれば、タイムロス。かといって、Gをかけ過ぎて、一瞬でも11Gに達してしまえば、即ペナルティ。「みんな、今までの(0.6秒以内なら11Gを超えてもいいという)感覚に慣れているので、11Gを超えないようにするのは結構難しい」と話す室屋は、だからこそ、新ルールを歓迎するかのように、自信ありげにこう続ける。

「10Gを少し超えたくらいのところで、ビシッとキープする。非常に繊細なテクニックが必要になるが、それをちゃんとコントロールできるかどうかがカギ。パイロットのスキル勝負になる」

 ここまで室屋の言葉をまじえながら、今回のルール改正について説明してきた。だが、それがどんな影響を与えるのかは、実のところ、実際にレースが始まってみなければ(もっと言えば、今季が終わってみなければ)わからない。

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