挑戦してわかった。スーパーカブで時速200km出すのは超タイヘン (3ページ目)

  • text by Sportiva
  • photo by SMC

──NSX-01には、いかにもスピードチャレンジっぽいカウリングも装着されていますね。

「直線をひたすら約10マイル走って、そのうち1マイル区間の平均速度を計測するボンネビルのルールでは空力性能が重要になります。ところが今回、バイク関連のFRP(繊維強化プラスチック)業者にカウリング製作を打診しても、いい返事はもらえませんでした。そりゃそうですよね、手間のかかる一品モノを請け負っても、ビジネス的にはほとんどメリットがないですから。

 そんな苦境を救ってくれたのが、マリン業界です。ボートやヨットなどでオーダーメイドのFRP製作が得意なスペシャリストが興味を持ってくれて、設計はカドエンジニアリングさん、製作はマリノ・プロジェクトさんと多田化工さんがやってくれることになった。僕がマシンにまたがったまま、赤外線スキャナーで3Dスキャン。自分の体を覆うギリギリかつ低空気抵抗のカウルを追求した結果、まるでマグロみたいな形状になり、現地では"オレンジツナ"と呼ばれて妙な人気がありました(笑)」

まるで、バイクにライダーが「はまった」ような状態にまるで、バイクにライダーが「はまった」ような状態に

──"マグロ形状"はライディング中に効果を発揮しましたか。

「そうですね。体の側面は露出していないといけないレギュレーションなので、ちょうど僕がスッポリはまったような半固定状態でマシンと一体化します。ただ、空力的には良くても腕を左右に振ることも足を動かすことも、ほぼ不可能。路面追従性アップと、パニックブレーキでの転倒を避けるためブレーキはリアのみしか付いておらず、"曲がれない、止まれない、体を動かせない"というのはアタマでわかってはいても、体が感じてしまう恐怖との戦いでもありました。

 それに、コースではタイヤが巻き上げる塩粒がバシバシと目鼻口に飛び込みます。痛みに悲鳴をあげますが、風圧で速度が落ちると嫌なので顔は上げられません。陽炎(かげろう)で天地の境界もぼやけてしまい、周囲は360度が真っ白。コースサイドには4分の1マイルごとにフラッグが立っているのですが、だんだん方向感覚も距離感も失われてしまう。はじめのトライアルではゴールをはるかに通り過ぎてから、ようやく競技区間が終わったことに気づいたほどでした」

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