要件を満たすだけでは不十分。日本人F1ドライバー誕生への高い壁 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 アーデンではどれだけセットアップを施しても、マシンには速さがないうえにトラブルが相次ぎ、メカニックの作業ミスも目立った。シーズン終了後のチェックではモノコックにクラックがいくつも見つかるなど、実力が発揮できる状態でなかったことは明らかだった。

 ヨーロッパに挑戦した若手ドライバーふたりが、それぞれ本領を発揮できない中途半端な形でその挑戦を中断し、日本に戻らなければならないのは残念だ。

 その一方で、スーパーフォーミュラとスーパーGTの両タイトルを獲得してスーパーライセンス取得の要件を満たした山本尚貴は、アブダビGPに訪れてF1のチャンスを模索した。だが、こちらも具体的な成果を得られなかった。

 トロロッソ・ホンダのテストドライバーを務めるショーン・ゲラエル(インドネシア/22歳)のように、FIA F2に参戦しているドライバーには500万~1000万ユーロ(約6億3000万~12億6000万円)程度の持ち込み資金と引き替えに、公式テストでの走行と複数回のフリー走行1回目出走がオファーされるのが通例だ。2018年でいえば、ニコラス・ラティフィ(フォースインディア)、アントニオ・ジョビナッツィ(ザウバー)、ランド・ノリス(マクラーレン)、ロベルト・クビツァ(ウイリアムズ)らがそれにあたる。

 しかし、レッドブルとトロロッソは山本のレギュラー起用どころか、こうしたテストへの起用にすら難色を示し、現状では来季の日本GPでのFP1出走に向けて、あらためて議論を進めるといった状態だ。

 つまり、いくらスーパーライセンスポイントがあっても、ヨーロッパのサーキットやピレリタイヤの経験がなければF1のチャンスを掴むことはできない、という現実が突きつけられてしまったことになる。ホンダと強い提携関係にあるレッドブル及びトロロッソでさえそうなのだから、日本人ドライバーがF1のレースシートを掴み獲るためには、やはりFIA F3やFIA F2で結果を出さなければならないということになる。

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