「F1の夢はあきらめない」。松下信治が名門F2チームから欧州再挑戦 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・撮影 text & photo by Yoneya Mineoki

 ただ、1年あのクルマに乗ってきてクルマを知り尽くしているチームメイトに比べて、今回初めて乗った僕が細かな部分を詰め切れていないのは事実。これから詰めていかないといけませんね。そう考えれば、今はまだ気にしなくてもいいくらいの差だったと言えると思うし、レースシミュレーションはむしろ僕のほうが速いくらいだったので」

 イギリス主体のカーリンは、フランス主体のARTグランプリとは明らかに違う雰囲気だった。技術的アプローチもまったく異なっていた。

 それが自分には合っていると、松下は語る。

「ARTとは違って、向こうから『これはどう? こっちはどう?』ってくる感じ。データもたくさん見せてくれて、タイムが0.3秒遅かったら、『ここがこれだけ遅いんだよ』『ここがダメだよ、ここはこうしたほうがいいよ』っていう解説もしてくれる。

 それに、各マシンにレースエンジニアがいるだけじゃなくて、2台を統括するチーフエンジニアがいるシステムなので、チーム体制もいいですね。チームとしてオーガナイズされていて、しっかり面倒を見てくれる感じがします。

 ARTの場合は、タイムがいいとそこで満足してセッティングを変えないのですが、カーリンはタイムがよくても思いきってデフを変えたりというチャレンジングなこともしていた。なので、週末を通して沈みっぱなしっていうのがなくて、沈んでもそこから必ず抜け出すような感覚は覚えました。テストの内容もよかったし、カーリンで走れることになってよかったなと思いました」

 ARTグランプリ時代の松下はセッションが終わったあと、いつもレースエンジニアとふたりでトランスポーターにこもり、誰よりも長く、夜遅くまでデータを見ては分析していた。逆に言えば、それを自力でやらなければならない環境だった。しかしカーリンならば、チーム全体としてそれをサポートしてくれる環境が整っている。

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