「F1の夢はあきらめない」。松下信治が名門F2チームから欧州再挑戦 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・撮影 text & photo by Yoneya Mineoki

 8月のベルギーGPに行き、アポなしでFIA F2の有力チームの関係者に会ってシート状況を確認し、さらにレッドブルのヘルムート・マルコらにも会って自身の存在をアピールすることも忘れなかった。

 こうした執念とも言える強い気持ちは、ヨーロッパの荒波のなかで戦っていくためには欠かせないものだ。

 その思いの「強さ」と、実力を知る人々から評価された「速さ」が、ホンダを動かした。シート代のすべてを自力で集めることは難しくとも、ホンダの育成プログラムの一員として松下をふたたびヨーロッパへ送り込むことを決めた。

「異例な2回目のチャンスだと世間では言われていますけど、それにはそれ相応の理由もあるし、だからこそこのチャンスは生かしたいなと思います」

 日本に戻されたときも、松下はあきらめなかった。あきらめなかったからこそ、このチャンスが巡ってきた。ヨーロッパに戻れるか戻れないかというようなことは一切、考えなかったと松下は言う。

「そんなことは何も思っていなかったですね。可能性がどうとかじゃなくて、やるかやらないかだと思っていたので。やってダメだったら、まだあきらめもつくけど、やらないでダメだったっていうのは嫌だったんです。だから、やっただけです。何パーセントかなんて、考えていなかったです」

 そんな経緯を経て、松下は11月29日から3日間、アブダビで1年ぶりとなるFIA F2のテストに参加した。カーリンという新しいチームで、F2/18という新しいマシン。そのすべてを学ぶことを最優先に走り、しっかりとした手応えを掴んだ。

「3日間全体の自己評価としては、かなりいい感じでした。いろんなテストをしましたけど、一番大事なレースシミュレーションがうまくいきました。正直、最終日の最後はトップタイムを狙っていたんですけど。

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