「F1の夢はあきらめない」。
松下信治が名門F2チームから欧州再挑戦

  • 米家峰起●取材・文・撮影 text & photo by Yoneya Mineoki

「それ(山本モータースポーツ部長の言葉)は理に適ったことだと思いました。でも(もてぎの快走など)勝てるポテンシャルは少しでも見せられたと思うし、その後の説得材料になったと思います。

 それから、周りの人が評価してくれたというのも大きかったと思います。(FIA F2に参戦している)DAMSのフランソワ(・シカール/チーム代表)もそうだし、国内でも(鈴木)亜久里さんをはじめとして評価してくれたみたいで、そういう人たちからの評価というのも大きな後押しになった」

 とくにDAMSは昨年、松下のチームメイトだったアレクサンダー・アルボンが今年彼らのチームで好走を見せてランキング3位に入りF1昇格(トロロッソ入り)を決めたことや、アルボンを介して昨年のARTグランプリのチーム状況や技術的アプローチに低迷の原因があったことを理解しており、ある意味ではホンダ以上に松下を高く評価していた。実際DAMSは、昨年のFIA F2で松下がランキング5位以内に入り、スーパーライセンスを手にするものと考えていたのだという。

 その一方で、もうひとつの決め手になったのが、松下自身によるヨーロッパ再挑戦への努力だ。

 今、FIA F2に参戦するには年間で2億~2億5000万円ものシート代が必要になる。その資金を自力で集め、ホンダの育成プログラムに頼ることなく自力で参戦しようと動いていたのだ。

「そういうアイデアを持ち始めたのは、(スーパーフォーミュラが)開幕して落ち着いた5月ごろですね。それから8月にスパ・フランコルシャンに行って、あの時はまだ(具体的な話は)何もなかったけど、とにかく現地に行っていいチームと言われているところには全部行って話をして。

 まずは日本国内でかなり動いていたんですけど、それだけの金額を集めるというのは今時の日本では珍しいことだし、そういう知り合いを増やさなければなりませんでした。自分だけで集められたわけではなくて、大勢の人が応援してくれてできたことだし、とても幸運だったと思います」

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