ジェンソン・バトンが本領発揮。参戦1年目でスーパーGT王者に輝く (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

「ピットアウトしたときに38号車が目の前を通過したので、『しまった!』と思ったよ。(後方から追い上げる1号車の)平川選手のペースが速いのはわかっていたから、自分のタイヤが新しくてグリップ力が高いうちに、早く38号車を追い抜く必要があると思った」

 ここからバトンは、38号車の石浦に猛烈なアタックを仕掛ける。そのアグレッシブさは、これまでの7戦では見られないほど勢いがあるものだった。しかし相手は、今年でスーパーGT参戦100戦目を迎えた大ベテラン。バトンは石浦と一進一退の攻防を繰り広げた。

「タイヤの消耗は気にせずにプッシュしたよ。この時、一番重要だったのは、レクサス勢の前にいなければならないことだったから。すごく楽しいバトルができたけど、石浦選手のブロックは完璧だった。数周のうちに、『これは抜けないな』と判断したよ」

 バトンは38号車とのバトルから一旦引き、タイヤをケアする方向へと切り替える。一方、1号車の平川は4番手に浮上し、バトンに迫ってきた。そして残り10周になって両者の差は2秒を切り、フィナーレは直接対決という最高の舞台が整った。

 コースの習熟度、GT300との混走経験を考えると、完全に有利なのは平川だ。だが、ここで元F1王者の本領が発揮される。第7戦まで苦戦することが多かったバトンだったが、この緊迫した状況のなかでスムーズに混走を処理し、むしろ平川よりもリズムよくGT300マシンをパスしていった。

「僕はこれまで数多くのレースを経験しているし、プレッシャーとの付き合い方も知っている。だけど、トラフィック(GT300との混走)はまったく初めての経験だったので、今年はすごく苦労した。でも、いろいろ学んだことを、今回の最終戦で生かすことができた」

 最終戦のバトンは、手探りの状態で走っていた開幕戦のころとはまるで違っていた。これまでは慎重になっていた部分もあったが、最終戦ではアグレッシブに攻めていく一面を見せ、終盤のポジションをキープする走りも経験豊富なGTドライバーたちとまったく遜色のないレベルに達していた。

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