ホンダが「F1で勝つドライバー」育成に本腰。「速く走るだけではダメ」 (2ページ目)

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi 樋口 涼●撮影 photo by Ryo Higuchi

「ホンダとパートナーを組むレッドブルとトロロッソでシートは4つあるわけですが、そこに乗ることを目指すというよりも、そこでしっかりと戦えるドライバーをどのように育てていくのかが目標になります。琢磨さんはF1で表彰台に上がっていますが、我々が次に狙うのは表彰台の真ん中です。そこに乗れる日本人を育てたいのです!」とホンダの山本モータースポーツ部長は語る。

 では具体的にどのようにして世界で勝てる日本人ドライバーを育てる計画なのだろうか? 新生SRSの"ツートップ"佐藤琢磨と中野信治に聞いてみると、現役のレーシングドライバーでもあるふたりは"人間力"というキーワードを口にした。SRSの第3期の卒業生でもある佐藤琢磨は言う。

SRSの目標について語った佐藤琢磨SRSの目標について語った佐藤琢磨「SRSではこれまで現役のトップドライバーが講師となり、生徒に直接指導してきました。これは生徒にとって大きな刺激になりますし、素晴らしいプログラムです。この部分はそのまま引き継いでいきたいと思っていますが、速く走るための技術というのは私や信治さんがどうこう言っても実はあまり変わらないんです。センスのある子、探究心のある子は黙っていても伸びていきます。

 速く走るための技術や実力はもちろん大事ですが、それだけでは世界のトップで通用しないと僕は感じています。勝てるドライバーというのはチームの求心力にならなければいけません。そのために何が必要かと言えば、人間力、いわば人間的な魅力なんです。

 SRSでは、周囲が『コイツは伸びていくだろう』『コイツを応援してやろう』と思うような、人間的に魅力のある若い選手を育てていきたい。そういう選手は、おそらくどの国の、どのカテゴリーの、どのチームに行っても、自分がパフォーマンスを発揮できるための環境を自らつくっていくことができると思います。そういう人間力を培うことができるように、僕と信治さん、講師陣とみんなでバックアップしていきたいです」

 佐藤琢磨は2019年シーズンもアメリカのインディカーにフル参戦するため、すべてのカリキュラムに顔を出すことはできない。彼に代わって現場を見ていくことになるのが中野信治だ。琢磨がもっとも信頼する先輩ドライバーのひとりである彼もまた "人間力"を強調する。

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