ロッシ転倒、またも勝てず。マルケスの追い上げに「今季最初のミス」 (3ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 一方、マルケスの側は「自分もバレンティーノも限界で戦っていた」と、この日のレースについて話した。彼がロッシに追いつくまでの状況は、以下のとおりだ。

「7番グリッドからのスタートが、強烈なモチベーションになった。過去に3列目からスタートして勝ったことがなかったので、それが『エクストラモチベーション』になったんだ。

 前方でバレンティーノがすごく攻めているのが見えた。自分も予選みたいな勢いで攻めたけど、タイヤに熱が入り過ぎてしまった。最終コーナーではフロントが切れたけど、ひじでなんとか抑えた。そこから、落ち着いてタイヤの状況を考えるようにした。

 フィーリングがよくなってきて、コンマ数秒ずつバレンティーノに追いついていった。前のライダーに追いついていくことが、さらに『エクストラモチベーション』になった。そこからは本能に従って、頭では考えずに限界まで攻めた」

 ここでマルケスの言っている『エクストラモチベーション』とは、「前方にいるロッシを逃がさない。絶対に追いついて、彼の前で自分が優勝してみせる」という強い意志を婉曲に言い換えた表現、と考えていいだろう。

 マルケスは「もし、まだチャンピオン争いをしている段階だったら、今日のようなレース運びをしていたか」と問われた際に、「ドヴィ(アンドレア・ドヴィツィオーゾ/ドゥカティ・チーム)を相手にタイトルを争っている状態だったら、今日は3位か4位だったと思う。2位は狙ったかもしれないけど、優勝争いはしなかったと思う。今回は『エクストラモチベーション』があったから、ことさらに攻めたんだ」と答えていることからも、それは明らかだ。

 そして、目の前でロッシが転倒した経緯については、このように推測した。

「あのレベルの戦いでは、たとえコンマ数秒でも損をしたくない。1コーナーでは少しだけバレンティーノがはらんでしまい、早くラインに戻ってこようとしてフロントが切れこんでしまったのだろう」

 両選手の明暗はくっきりと分かれる結末だったが、それだけになおさら、観戦する側にとってはまたひとつ強烈な記憶が焼きつけられるレースになった。

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