戴冠を決めたハミルトンにベッテルが「辞めるな」と言った理由 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「クリエイティビティと向き合うというのは、ネガティブな要素なんてなくて、すべてがポジティブなんだ。僕のやることに対して、人それぞれいろんな意見があるだろうし、批判的なことを言う人もいる。僕だってすべてが完璧ではいられないし、間違ったことを言うこともあるだろう。

 でも、ひとつだけ確かなのは、僕は自分のやりたいようにやるということだ。こんなふうに僕の人生を生きられるのは、僕だけだ。誰にも、それをねじ曲げる権利なんてない。僕は最良の自分であるために、正しいことをやろうとしている。

 自分のなかの異なるマインドに触れるコース外での活動は、ある意味ではレーシングドライバーであることと無関係のように思えるかもしれない。しかし、そうやって脳を刺激し、知識を得ることは力になる。新たな経験は知識となり、旅をすればそれだけ新たな経験と知識を得ることになる。

 僕には、それはポジティブなことにしか思えない。すばらしいブランドを築き上げたトミー(・ヒルフィガー)のような人と触れあうことで、僕は自分自身を刺激し新たなことを吸収しようとしているんだ」

 ある意味でそれは、勝利のためにどこまでもストイックで、常人には理解できない孤高の世界だ。だからこそ、常人は自分の理解が及ばないことに拒絶反応を示し、批判する。

 今季、ベッテルがコース上で何度もミスを繰り返すたびに多くの批判が沸き起こったが、彼ほどのドライバーがマシンを接触させたり、スピンを喫したりというのは、それだけ彼が高いレベルでマシンを操り、極限まで攻めていることの証でもある。

 そして、コース上で同じスピードで競い合うハミルトンは、ベッテルの戦っている次元の高さ、その次元で戦っていれば人間とはミスを犯してしまう不完全な生き物であるということ、そこから立ち上がることで自分を磨きさらに強くなれることを知っている。

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