ベッテルは今年もタイトル遠し...。
原因はまたもフェラーリのお家騒動か

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 テクニカルディレクターを務めるマティア・ビノット自身がその渦中にあるだけに、その余波でマラネロ(フェラーリの本社工場)は技術的な方向性を見失ってしまっているのではないかとの見方もある。しかし、ベッテルはそれを否定する。

「技術的な方向性を見失っている、ということはないよ。マシンは着実に進歩し続けているし、計画どおりに開発も進んでいる。ライバルと比べてどうかは別として、僕ら自身はあるべき地点に到達できているし、望みどおりのところにいるんだ。

 僕らのマシンは優れたマシンだけど、シーズンを通して一度たりとも圧倒的な最速のマシンだったとは思わない。予選でも決勝でも接戦だし、スパのように勝ったレースでも予選で前にいたわけではなかったしね」

 その一方で、フェラーリは自分たちのミスによる取りこぼしが目立った。フランスGP、ドイツGP、イタリアGP、日本GPと、ベッテルの接触やクラッシュによるロスが目立つ。

 接触自体は、僅差のなかでのバトルだけに仕方がない。マシンの速さが格段に増した現行レギュレーション下では、ひとたび限界を超えれば、これまでとは比べものにならない速さでマシン挙動はブレイクするため、どんなドライバーでも対処は不可能だ。

 問題は、ベッテルがそこまでプッシュしなければならない、コース上でリスクを冒さなければならない状況をフェラーリが自ら作ってしまっていることだ。レース戦略の拙(つたな)さのせいで、ウェットコンディションでも焦ってプッシュしなければならなかったドイツGPがその最たるものだろう。

 また、チームプレイを徹底していればモンツァ1周目の接触も避けられたし、日本GPでは予選でギャンブルをする場面ではなかったにもかかわらず、タイヤ選択ミスを犯して後方グリッドからの追い上げを強いられたことが接触につながった。

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