ホンダ待望の「スペック3」投入。鈴鹿に向けてロシアGPはどう走る? (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文・撮影 text & photo by Yoneya Mineoki

 しかし、浅木泰昭体制で臨む今季のホンダは、小さなアイテムを捨てて大きなアイテムだけに絞り、それをスペック3として完成させた。来季も同じレギュレーションが続くからには、ここでの踏ん張りと前進、そしてなにより実戦でそのスペックのデータ収集とノウハウを蓄積することが、来季の躍進につながると考えたからだ。

 その結果、スペック3はシーズン中の開発としてはかなり大きなものに仕上がった。

 一部では35馬力や40馬力といった数字がまことしやかに報じられて、その噂がひとり歩きしているが、ソチの1周ラップタイムで0.5秒――つまり25kW(約34馬力)というのは、かなり非現実的な数字だ。

 ピエール・ガスリーに0.5秒のゲインを期待しているかと聞くと、あり得ないと言わんばかりに呆れ、驚いた顔でこう言った。

「0.5秒のプレゼントなんて、クリスマスでもなきゃ無理だよ(笑)! 実際にどのくらいなのか、正確な数字はまだわからない。ホンダ側の推定はあるだろうけど、実際のところは明日走ってみないと。走る前からあまり大きなことは言いたくないしね」

 ただ、そこまでではないとしても、スペック3がもたらすゲインはかなり大きなものになりそうだ。

 少なくともホンダは、ここでスペックCとスペックBの狭間で揺れるルノーを完全に凌駕するつもりだ。田辺テクニカルディレクターは言う。

「ある程度、それが見えるレベルのパフォーマンス向上が確認できたので投入しています」

 ただし、理論値としてそれができていても、コース上の実走で再現するのは簡単なことではない。気温や湿度が違えばエンジンの燃焼は変わり、セッティングの調整が必要になる。今のパワーユニットは燃料流量が制限されているため、同じ燃料量でICEがパワーアップを果たしたということは、燃焼効率が上がったということであり、排気温度・排気圧は下がる。

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