6年ぶりの優勝。J・バトン、スーパーGT初勝利で王座獲得へ前進 (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 午前の公式練習の途中から雨が降った影響もあって、バトンが新品のスリックタイヤでSUGOをタイムアタックしたのはQ1が初めてだった。新品タイヤと中古タイヤでは1周あたり2秒ほどタイムに影響を及ぼすことがあり、もちろん走行時の感覚もまったく異なる。それでも3番手タイムを叩き出すあたり、あらためてバトンの適応力の高さを感じる予選アタックだった。

 続くQ2では、山本がコースレコードを更新する1分10秒248をマーク。バトンにとっては2012年のF1ベルギーGP以来、実に6年ぶりのポールポジション獲得となった。

 そして日曜の決勝レース。後半にステアリングを握ることになったバトンは、山本がピットストップしてくるのを待った。前半はカルソニックIMPUL GT-R(ナンバー12)にパスされて2番手に後退するものの、迅速なピット作業とピットアウト直後の安定した走りで39周目に逆転。バトンはトップを奪い返すことに成功した。

 さらに45周目の最終コーナーで12号車がコースオフ。後続との差が広がったことで、「このまま初優勝か?」と期待は一気に高まった。だが、このコースは毎年波乱が多く、「魔物が棲む」と言われるSUGOである。ゴールまでの残り25周が、バトンにとって最後の正念場となった。

 2番手以下に対して18秒もの大量リードを築いていたが、57周目の最終コーナーでGT300車両を追い抜こうとしたとき、ラインを外してしまいコースオフ。SUGOの「落とし穴」に引っかかってしまう。

 幸い大きなタイムロスはなく、後続に対して10秒以上のリードを維持することはできていたが、試練はさらに続く。クラッシュ車両の回収のために残り12周でセーフティカーが導入され、10秒以上の差がゼロになってしまったのだ。

 しかし、バトンは冷静に再スタートを切り、その後もトップを死守。残り5周で起きたアクシデント(ドクターカーがコース内を走行する異例の事態)も無事に切り抜け、待望のスーパーGT初優勝を飾った。

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