3年ぶりスーパーGT優勝も、山本尚貴がレース中に不愛想だった理由 (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 メカニックの力不足なところがあっても、山本は決して彼らを批判することはなかった。むしろ、足りない部分を自らの走りでカバーするレースを何度も見せ、ATJとの優勝を誰よりも求めていた。

 そんななかで迎えた今回のSUGOラウンド。レース前の時点でドライバーズランキング3位につけていた100号車は、80kgという重たいウェイトハンデを背負ってのレースとなった。しかも、大会前にはマシンのイコールコンディションを保つために性能調整が行なわれ、ホンダNSX-GT勢の最低車両重量は10kg引き上げられた。

 迎えた土曜の予選日。山本はQ2でコースレコードを塗り替える速さを見せ、ポールポジションを獲得する。ただ、山本の表情に笑顔はない。予選後の記者会見でも言葉は少なく、日曜の決勝日になっても険しい表情は変わらなかった。山本はその理由をレース後、こう語る。

「チームの雰囲気を、"いい意味で"壊したくなかったんです。僕がポールポジションで喜んでしまうと、レースまでに皆の集中力が続かなくなってしまう可能性もあったので......。無愛想になってしまっていた部分はあったかもしれませんが、勝ってから喜びたいなという思いが強かった」

 目指すはポールポジションでなく、優勝――。そんなドライバーの思いに、メカニックも応える。

 レース前半の23周目、ナンバー12のカルソニックIMPUL GT-R(佐々木大樹/ヤン・マーデンボロー)に先行を許してしまう。だが、100号車の山本はしっかりとその背後に食らいつき、逆転のチャンスをうかがった。

 そして、34周を終えたところで山本はピットイン。すると、ATJのメカニックは迅速な動きで作業を終え、わずか39.6秒でコースに送り出した。一方、12号車は38周を終えたところでピットインし、作業時間は43.8秒。100号車のほうが4.2秒も速かった。

 ピット出口での逆転はならなかったものの、コース復帰直後でペースの上がらない12号車をバトンが早々にオーバーテイク。トップの座を奪い返し、そのまま最後まで走り切って優勝を飾った。

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