トロロッソ、得意コースで大失速。最大のチャンスが一転して惨敗の謎 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「それは、マシンセットアップでは取り返せない差だ。仮にアンチロールバーや車高などのセットアップが完璧だったとしても、1秒も遅くなるようなことはない。つまり、マシンパッケージの基礎的な問題だというわけだよ」

 とはいえ、これは予選での1周アタックに関することで、連続周回をする決勝ではまた話は違うはずだった。金曜フリー走行2回目のロングランでは、ハイパーソフトのペースも保ちも、ライバルと比べて決して悪くはなかった。そこにまだ、望みはあるはずだった。

 だからトロロッソ・ホンダは、周囲のほぼすべてのマシンがウルトラソフトでスタートするなか、2台ともにハイパーソフトタイヤをスタートに選び、そのペースと保ちのよさを生かしてタイヤ戦略で逆転する可能性に賭けた。

「僕らはレース週末の走り始めから、あんまり速くないことがわかっていたから、周りと同じ戦略で戦ったのでは(ポジションアップの)チャンスはなかった。だから、トライする価値のあるギャンブルだったんだ」(ガスリー)

 ガスリーはハイパーソフトのグリップもあって、スタートでポジションを3つ上げて12位に浮上した。だが、モナコで40周も走ったハイパーソフトがシンガポールでは15周目には性能低下が進んでしまい、ギャンブルは失敗に終わった。というよりも、ハイパーソフトが保たせられないのなら、最初から成功の可能性などなかったのだ。

「マシンに速さがあって、なおかつ戦略もうまくいけばポイントを獲得できるかと思ったんだけど、思っていたよりもデグラデーション(性能低下)が大きくて、15~16周目にはタイヤがタレ始めてしまった。そこから25周目まで引っ張ったけど、バイブレーションがひどくてタイヤロックもしてしまうし、アンダーステアがひどくてマシンはフラフラだった」

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る