佐藤琢磨がキャリア3度目の優勝。アクシデントを味方にレースを支配 (2ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 マルコのマシンの周りにストップしていたマシンは、グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、エド・ジョーンズ(チップ・ガナッシ・レーシング)、ヒンチクリフ、そしてディクソンのものだった。

 パワーの言った通りになった!と思ったが、ディクソンのマシンは土埃こそかぶっているものの、外から見える大きなダメージはなく、エンジンを再始動させてレースに復帰。周回遅れに陥ることもなく、ペースカーが従える列の最後尾につけた。

 レースが再開されると、パワーがトップ走行中に急減速。ギヤボックスのトラブルで優勝戦線から脱落し、その後にアクシデントを起こした。ポートランドで決定的不運に襲われたのは、ディクソンではなくパワーだった。

 これでトップはロッシのものとなるが、1回目のピットストップでロッシはブラックタイヤを選んだのに対し、ニューガーデンがレッド装着でトップを奪った。ポートランドはこの2人の優勝争いになる......と思えたが、105周を2ストップで走り切る作戦を選んでいたチーム&ドライバーが幾つかあった。そのなかで展開を見事に利用してトップに立ったのが佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だった。

 予選はグループ分けが不運に作用して20位。しかし、マシンの仕上がり具合に自信を持っていた琢磨は、「後方からのスタートなのだから、燃費作戦で上位を狙おう」とチームに提案した。
 
 スタート直後から燃費を強く意識して走り続けた琢磨。そしてポートランドでの彼のマシンにはスピードもあった。予選ではレッドタイヤ用のセッティングがいまひとつだったが、レースに向けて、大きな勇気を持って空気抵抗を減らすセッティングをプラス。その結果、レッドタイヤでの走りはペースがよく、しかも安定していた。

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