小林可夢偉、初の表彰台。鈴鹿を埋めた10万人のエネルギーが爆発 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 可夢偉も、チームも、この鈴鹿という舞台でついに「普通のレース」ができた。運でもギャンブルでもなく、実力で表彰台を勝ち獲ってみせた。それはたった1回の表彰台かもしれないが、ギャンブルで得た何回もの表彰台よりも価値のあるものだった。

 チームの財政状況を理由にこの年限りで可夢偉と離別しなければならなかったモニシャは、こうして最後に可夢偉が表彰台に立てたことに、涙を流して喜んだ。

「母国の大観衆の前で表彰台に立てて、最高の気分でした。これまで何度も(表彰台の)チャンスがあったのに、不運で掴めなかった。でも、母国で初めて表彰台に上がる。それが僕の運命なんじゃないかって。レース前にそんな話をしたんです」

 レース後、ザウバーのスタッフたちは表彰台と記者会見から戻ってくる可夢偉を待ち受け、担当メカニックのひとりがずっと持っていた大きな日の丸を広げて抱き合い、歓びを分かち合った。それだけ、チームに愛された男だった。

 日本人が、日本で初めての表彰台に立つ。大観衆からも、チームからも、心から望まれてそんな夢を叶え、大きな感動を与えてくれた。

 あの瞬間を上回る感動が、またいつか味わえることを願ってしまう。だから我々は、今年もまた鈴鹿に足を運ぶのだ。

(つづく)

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2018年10月5日(金)~10月7日(日)

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