ライコネンが鈴鹿で驚異の16台抜き。ファイナルラップで奇跡の逆転劇 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 コスト削減の観点から、1セットのタイヤで決勝を走り切らなければならないという規定が設けられたのも2005年の特徴だった。

 マクラーレンやルノーが使うミシュランはこの年、タイヤ開発戦争の末にブリヂストンに大差をつけてシーズンを席巻。だが、インディアナポリスで行なわれたアメリカGPではオーバルのバンクでタイヤにかかる負荷を受け止めきれずに決勝レースから撤退するという騒動を起こした。ライコネン自身もニュルブルクリンクのヨーロッパGPでは、フラットスポットによる振動が発生していたにもかかわらず走り続け、最終ラップにフロントサスペンションが弾け飛んで優勝を失うという苦い経験をしていた。

 だからこそ、鈴鹿では後方からアグレッシブに追い上げながらも、最後までしっかりとタイヤを保たせるタイヤマネージメントも徹底していた。

 最後のピットストップを終えて2位でコースに復帰したライコネンだったが、首位フィジケラとの間にはまだ5.4秒のギャップがあった。残りは8周――。

 それでも、ライコネンはあきらめなかった。フィジケラのタイヤは摩耗が進み、ペースが上がらない。ライコネンは1周で2秒も速いペースで猛烈な追い上げを見せ、一気に背後へと迫る。

 残り2周となる51周目から52周目のメインストレートで、ライコネンはフィジケラ攻略を試みる。だが、フィジケラはインを押さえてトップを死守。それを見てとったライコネンは、次の周も同じようにメインストレートで仕掛けるが、フィジケラがその手前のシケインでもストレートでもインを守りに入ることを予測した。

 ライコネンはシケインから最終コーナーへの立ち上がりを最優先にしたライン取りで加速していき、メインストレートでは1回、2回とインに振るフィジケラのスリップストリームをギリギリまで使って、アウト側に並びかける。2台で並んで最終ラップの1コーナーへと飛び込んでいき、最後の最後で前に出たのは、アウト側から理想的なラインでアプローチしていったライコネンだった。

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