イタリア国内で人気回復。フェラーリは2010年以来の地元Vなるか (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 しかし、僕らとしても油断はしていられない。今の僕らはまだ、去年までのメルセデスAMGほどのアドバンテージを持っているわけではないし、勝利を掴み摂るためには、まだまだ懸命な努力が必要なんだ」

 フェラーリはパワーユニットのバッテリーに特殊な制御システムを採用していて、それが大きなアドバンテージを生み出しているという説がまことしやかに囁(ささや)かれている。ふたつのバッテリーを持ち、MGU-H(※)からの充電とMGU-K(※)への放電を同時に行なうことができるとか、1周あたり放電4MJという制限を回避する特殊な電子制御ユニットを持っている......などなど。しかし、どれも眉唾(まゆつば)で証拠に欠ける。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。
※MGU-K=Motor Generator Unit-Kineticの略。運動エネルギーを回生する装置。

 フェラーリが他社に比べて、1周あたり長いディプロイメント(エネルギー回生)時間を実現しているのは事実だ。そこに特殊な制御が介在していることは確かだが、FIA(国際自動車連盟)が合法と判断した以上は、1周4MJを超えるバッテリーからMGU-Kへのディプロイメントは行なわれていない。

 となれば、放電4MJ・充電2MJの制限対象外であるMGU-HからMGU-Kへの直接のディプロイメント、もしくはバッテリーとMGU-Kの間にMGU-Hを介しての電気のやりとりを巧みに制御していることになる。

 いずれにしても重要なのは、ERS(エネルギー回生システム)のディプロイメントは120kW(約160馬力)以上にはならないということだ。つまり、最大出力でフェラーリがメルセデスAMGを上回っているのなら、それはICE(内燃機関エンジン)とTC(ターボチャージャー)の純粋な性能が上回っているということに他ならない。バッテリーや特殊な制御うんぬんの話は、あくまで決勝でのディプロイメント時間に関連することでしかないのだ。

「2016年がカギとなるシーズンだったんだ。パフォーマンスではすばらしいとは言えないシーズンだった。コンストラクターズ2位になったとはいえ、もっとトップに近づけたはずだった。

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